破れぬ夢を引きずって/鈴野まこ

作品名:破れぬ夢を引きずって

作者名:鈴野まこ

性癖:惚れた男に娼婦をあてがわれる男

性癖:痩せぎすの女

作品URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054947137249


 やつれた娼婦と、その娼婦を使って自分の雇い主の男に向けた感情を発散する大柄な荒くれ男の話。


 娼婦という存在が何らかの代用品であるというのは当然なんですが、尊敬する惚れた男の代用品というのは中々無い使い方だと思いました。

 単に性欲を発散させる為ではなく、その男に『自分の死体をやるまでの繋ぎだ』と言われたから使っているのでしょう。無理に使わずとも我慢できるけれど、使えと言われたから使っている。女に対して特別な感情など無いという感じ。いや、女と言うよりは惚れている男以外の人間全員に対してそうなのかもしれませんね。

 そして女もそれが分かっているけれど、娼婦として生きているのだから金を貰ったのならば客の相手をしなくてはいけない。娼婦以外の生き方を知らないし、出来るかどうかも分からない。生きるのには金が必要だし、金を貰っているから生きなければならない。という、前に進めないし後ろにも戻れない状態。

 こんな生活が長く続く訳がない事は登場人物全員が分かっているのに、だからと言って三人とも今更生き方を変える事が出来ないんですね。とても退廃的。そういった部分がタイトルの『敗れぬ夢を引きずって』に繋がっているんではないでしょうか。

 又、女の『娼婦』という部分に強いこだわりを感じました。

 作中の文章で『風俗嬢』という言葉が出て来るのに、この女は『娼婦』なんですよ。風俗嬢と娼婦の違いは店に属しているかいないかっぽいのですが、

『 娼婦:性を売る事でしか生きられない

  風俗嬢:性を売る事以外でも生きれる 』

 という使い分けをしている様に感じました。意識してか無意識かは分かりませんが、この部分が鈴野まこさんの性癖ポイントなのでしょう。


 短くともどろどろに濁った感情渦巻く濃厚な性癖小説でした。

 こんな生き方をしなくちゃいけない人間なんて死んじまった方がいいんだという女の呻きが心に響きます。

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