第3話 暗殺者グレイザーク

 彼は暗殺に失敗した。持ち前の技や武器では足らなかったのだ。

 暗殺の相手は火の賢者。口から吐く炎の息の凄まじい熱に負け、暗殺者グレイザークは撤退を余儀なくされた。


「ふっ。何てことだ最大の好機を逃すとはな•••」


 彼は撤退時にも少し気取りながら、跳躍して建物の間に隠れながら姿をくらました。


 

 デスゲイズとルーシャが番兵に止められた。

 ずぶ濡れのボロ布の旅行者を不審に感じたからだ。

 デスゲイズは魔法☆耳をカタムケールを使い、番兵は朦朧もうろうとして、門を開けさせた。かくして二人はザルカスの町に入ることが出来た。

 二人が巨大な町であたふたしていると、たまたま逃げて来た、グレイザークとぶつかった。

 グレイザークはボロ布をまとった二人に非礼を詫びて走り去った。

 デスゲイズはとりあえず町の明かりに飛び込み、ルーシャはなんとなくデスゲイズの後をついて行った。


 【酒場 つぶれたバジリスク亭】


 酒場の中は広大な階段構造になっていた。ザルカスの町も階段構造の町だ。

 まるでザルカスの町を模倣もほうした様な広い酒場であった。

 デスゲイズらが酒場に入ると店の客たちの数名らが声をかけてくる。

 ついで、ウエイトレスたちが席を案内する前にずぶ濡れの二人にタオルを渡して来る。

 デスゲイズはタオルを受け取り体の水分を拭いつつ、話かけてきた店の客と会話を始めた。


「ここは初めてかい?旅の方。北の方から?南の方から?あまり言葉になまりがないから、王都からきなすったかい?」


 デスゲイズは指を鳴らし、魔法を使い、客は「ああ、南から来たんだねぇ」と朦朧もうろうしながら呟いた。


「あぁ•••お腹がすいたわ•••」


 ルーシャが空腹を訴えると、デスゲイズも思い出した様に空腹を覚えた。


「何か食べ物が欲しいが金がない。ここの支配人は誰だ?」


 デスゲイズが話をウエイトレスに切り出すと、少し待てと言われ、しばらくのちに体格のいい巨漢の黒人がやって来た。


「おれがここの支配人ソウルだ。皆はおやじと呼んでいる。金がないなら仕事を与えてやる。どうだ。やるか?ぼうず」


 デスゲイズは見た目18歳前後の若者であった。ぼうずと言われても仕方ない。


「ああ、やってやるぜ。何の仕事だ」


「遺跡を探索している冒険者どもに食料を売ってくるだけの仕事だ!金や食料を盗むなよ!そっちの女はお前の仲間か?」


 ソウルがデスゲイズに、ルーシャの事をたずねられた。


「いいや。知らんやつだぜ」


 聞いたルーシャはぷーっとほほを膨らませ、「なかま!仲間よ!ねぇおやじさん。仕事をするからいっぱい食べさせてちょうだい!」と叫んだ。


 ソウルはむっつりしたまま、二人をカウンターテーブルに招き料理を振る舞った。ルーシャが今まで食べた料理の中で、最高の味がした。

 二人が食べて舌鼓したつづみを打っていると、またもやずぶ濡れの男が店に飛び込んで来た。

 男はカウンターテーブルに走りより、ソウルに助けを求めた。


「逃げ場がない!おやじさんかくまってくれ!」


 しばらく前に外の往来でデスゲイズらとぶつかった男であった。男はありったけの宝石をカウンターテーブルに並べて、ソウルの反応を伺うと、ソウルは首を縦に振り、男は地下の部屋に走って行った。


「さあ食べたかお前たち!最初の仕事は少し変わって先ほどの男を死ぬ気でまもれ!火の賢者がやってくるぞ!」


 ソウルはデスゲイズたちを地下室に誘導し、客たちは火の賢者が来ると知り慌てふためいた。火の賢者は暴君と民から恐れられている、ザルカスの闇の支配者であった。

 そして、まもなく――


 4名の殺人鬼を連れた火の賢者が店に現れた。

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