第2話 ルーシャが逃げ出した!?

「見張りはいないみたいね•••」


 ルーシャは、デスゲイズの寝室からこっそりと抜け出した。不気味なほどに静まりかえった空飛ぶ船の船内。

 無数にいた悪魔ヤカーンたちはどこに消えたのだろう。今や一匹も出会う事なく、ルーシャは甲板に到達した。ただし、地上までの距離は遠く、どうあがいても地上には戻れない。


悪魔ヤカーンになぶられるのも嫌だし、かと言ってお師匠さまのところに戻ればまた奴隷の身分に逆戻り•••どうにか逃げる方法がないかしら」


"と、その時強風が!!"


 ルーシャは風に体を持って行かれた!

 

「きゃああああああ!」


 ルーシャは空飛ぶ船から振り落とされ、雲の間に落下して行った。凄まじい速度で落下をするルーシャ。意識が途絶え、落下を続けた。



 空飛ぶ船の上で、一匹の悪魔ヤカーンが、失神しているデスゲイズをわしづかみにして、甲板からルーシャと同じ様に、地上に向かって投げ落とした。


「これで邪魔者はついえる•••」


 悪魔ヤカーンはデスゲイズが雲の間に消えたのを確認すると、姿をくらましてどこかに消えた。



 長い時を数え、地上にはルーシャとデスゲイズが並んで気絶していた。巨大な物音で驚いた水の賢者が屋敷の外に出てみると二人が倒れていたため、二人に鎖をつけて奴隷にして飼うことにした。


「ダムルーンさま!食事の準備が出来ました!」


 水の賢者ダムルーンの弟子が食堂に彼専用の料理を運んでくる。


「ダムルーンさま!寝室の準備が整いました!」


 ダムルーンが寝る時間には弟子たちが、あんまをしたり、体をさすったり毛布を入れ替えたり。

 そしてルーシャとデスゲイズに課せられた事は、ボロ布をまとわされ、飯を奪い合う観賞用奴隷という有様。


「それは私のパンよ!ムッキー!!」


「かみつくんじゃねーし!腕がいてーだろーが!」


 ダムルーンは自分の雇い主からこっぴどく叱責しっせきされていたため、ここぞとばかり二人をいたぶり続けた。


 さて、大雨が続いたある夜更けに、ダムルーンは賢者の会合に出るため屋敷を留守にした。

 いつもは恐ろしい番犬がいるのだが、デスゲイズが使った魔法で番犬が寝てしまい、弟子とルーシャとデスゲイズは皆こぞって逃げ出したのである!


 大雨の中をルーシャとデスゲイズが並んで走り、ルーシャが声をかける。


「あんた。なかなか役に立つじゃない」


「あ?!なんか言ったか?全然聞こえねーし!」


 二人はひたすら走った。

 どこまでも続く道は、やがてザルカスの町へ。

 二人の冒険の舞台はザルカス市から始まる。

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