第43話 前進の兆し

あの会議から数日。

俺達はさっそく周囲の魔物達へ顔を出しに行った。正確には隠密部隊と鬼兵達を派遣したのだが。


この森には多種多様な生物が生息しており、もちろん、魔獣に怯えながら日々過ごしている者たちもいる。

まずはそういった魔物達に声をかけることにした。

例えば、亜人など。

亜人は集団で過ごすことが少ない。なぜなら、そもそもの絶対数が多くないからである。その希少性のためか、あるいは人に近い姿の者も多いからか、よく人間の魔物密猟者に捕獲されたりもする。

亜人の単騎での戦力は決して低くないのだが、魔獣というのは暴走強化──バーサーク状態にある。ステータスが大幅に上がっているのだ。鬼兵部隊がよく出くわすものでは、魔獣1体に対し鬼兵10体で安全に処理しているらしい。

そんな鬼兵とほぼ同じステータスを持っているのが亜人だ。もちろん種族によって異なるが、目安としてのステータスはそれくらいのようだ。

その亜人の村が、小規模ながらこの森の中にあるらしい。

マダラの調べなので間違いはないだろう。


皆が勧誘に行っている間俺は何をしているのかというと、何やらフォロラド王国で動きがあったらしく、ネヴィルスと共に向かうところだった。

一応、使者を名乗る者が情報共有のためという名目で国に出向いてほしいと言ってきたのだ。

フォロラド王国の監視をしているマダラ曰く、災厄関連で何かあったらしい。

神ネヴィルスが簡単に人前に出ていいのかと思ったが、何やら聖女に用があるようで絶対行くと聞かなかった。

まあそういうことなら仕方がない、だろう。


ネルも連れて行きたいのだが、数日前ミスナやエルフ達を連れて帰ってきた時から少し様子が変わっている。

途中で隠密部隊と遭遇したようだが、その隠密部隊も何があったのかよく分かっていないようだ。

人間の密猟者の姿を見た、という報告は上がっているが──そういうことなのだろうか。


まあネルも国に帰りたいだろうし、やはり声をかけてみよう。

そう思いながらネルの部屋に向かい、扉をノックした。


「ネル、いるか?」

「レイン?どうしたのー?」


すぐに返事が返ってきた。

いつも通り…みたいだな。

ここ最近は寝不足の時のように低い声だったのだが、もしやただの睡眠不足だったのだろうか。


「これからフォロラドに行こうと思っていてな、ネルもどうだ?」


すると部屋からドタドタと騒がしい音が聞こえ、バッターンと勢いよく扉が開いた。

危ない、もう少しで扉に激突されるところだった。

扉をスレスレで回避したところで、俺の前ではネルが煌々と顔を輝かせていた。


「いっ、行きたい!」

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