第18話 再来
翌朝、俺はラースの作る朝食を食べていた。ネルは先に食べたようで、外に出ている。ラースも何かネルに何か感じる所があるらしく、そこそこに心を開いていた。
俺が日常的に食事を摂っていたその時。
それは急に訪れた。
突如ドゴォッと天から殴られたようなプレッシャーを感じる。な、なんだこれ?!
《マスター!もの凄い魔力エネルギーを纏った人間が近くまで来ています!》
「主様!失礼します、人間の軍勢が街に近づいています!数はおよそ10万、魔術師らしき人間の存在も確認!」
「魔術師?!どういうことだ?!」
ネルはまだ街の外に出ていないはず…。
ネルの増援に来たのか?
でも、なぜこのタイミングで来たんだ?
…いや、今はそんなこと考えている場合じゃない。早急に命令を出さないと。
「マダラ、以前と同じように幹部に報告の後住民の避難、警備の配置。あまり時間がない、急いで避難させろ!」
「はっ!」
「ラース、お前は
「了解しました!」
お前も行ってこい、アルス!
『良いだろう、主の民は我が家族も同然。死力を尽くして守るとしよう』
さて、俺はまず…
窓から飛び降りて飛行スキルで空から辺りを見渡す。すると魔王殿の館の前に立ち尽くしているネルを見つけた。そこに向かって思念を飛ばす。
「ネル、聞こえるか?」
「うおっ!魔王?!なんで頭の中に?!」
「思念伝達スキルだ。そんなことよりこれはなんだ、人間達がぞろぞろと向かって来ているようだぞ。」
「分からない…ボクの任務の増援だと思うけど、それにしては少しおかしい気がする。」
「おかしい、とは?」
「ボクを単騎でここに向かわせたのにボクの到着からそんなに時間の経ってない今増援が来るのがまずおかしい。そんなにすぐ兵は用意出来ない。まるで最初からここに兵を送ろうとしていたようにも思える。」
「ほう、それで?」
「うん、次におかしいのは最強の人物が来ていることだよ。」
「最強の人物?」
「ボクの師匠、美徳を持つ英雄達の中でも1番強い魔導師。
「そいつが来ることの何がおかしい?」
「師匠は千里眼の持ち主で、普段は強大な人類悪に対してしか動かないんだ。だからほとんど非番なんだけど…まさかお前人類悪になるのか?」
「人類悪、か…」
ラティル、人類悪とは?
《イエス、人類の生存に大損害を与えうる可能性を持つ存在の呼称です。災厄、と呼んだりもします。》
なるほど、俺がその人類悪もとい災厄かもしれないと侵攻に来てるということか。
「そんなことするつもりはないんだが…つまりさっきのとんでもないプレッシャーはお前の師匠のものか?あの魔力、絶対やばいだろその師匠。」
「やばいね、魔導師でありながらボクの剣の指導もしてくれたんだ。あの人はなんでもできるから…」
「とりあえずお前は人間(そっち)の兵に戻っていいぞ、できるならこの街の住民には攻撃しないでくれると助かるんだが…」
「いや、何か嫌な予感がする。ここにいてもいい?」
「ん?まあそれは構わないが…その魔導師とつるんで俺を倒さなくてもいいのか?」
「倒さなくてもいいのか?って…昨日盟友の契りを交わした相手を倒せるわけないだろう…」
「だがお前にも立場はあるだろ?俺と一緒にいたりすれば
「その時は、その時さ。行くあてがなくなったらボクを拾ってね?」
「そうか、なんなら今すぐにでも欲しいくらいだが…まあその約束、承ろう。」
街の警戒態勢は最大だ。
外壁を完全に遮断し街は
住民の避難が終わっていないが時間は俺が稼ごう。そう思い地上に降りた。
すると俺の上空で何か青く光った。
それは大きなピラミッド状に展開して街全体を覆う。
まずい!これは…!
《イエス、マスター。これは魔物の力をかなり低下させる聖結界の究極魔法です!これを使えるのは1人しかいません!》
1人か、どう考えてもネルの師匠の魔導師だろ…。
てかヤバいな、肌がヒリヒリする。魔王の俺でもこれなんだから住民達はもっとまずいんじゃないか?
「レイン!生きてるか?!」
「ネルか、俺は大丈夫だが住民が心配だ。ラース達も大幅に弱体化していると思うし、これはまずいな。かなり。」
「まさか師匠が星結界魔法を使うなんて…」
「やはり、とんでもなく強いようだな…今実感した。」
街の方からたくさんの声や剣戟音が聞こえる。外壁は突破されてしまったようだ。
まずいまずい。弱体化された今の
「ちょっと行ってくる、戦闘が始まってしまったらしいからな。みんなが心配だ。」
「ボクも行こう。何も悪くないこの街の住民を殺すのは許せない!師匠に抗議してやる!」
俺達は急いで正門付近に向かった。
街は当たり前だが閑散としていて住民の気配が全くない。
そのまま全力で走り飛ばして数秒。
倒れている
侵攻のペースがかなり早い。これも聖魔法結界で
そんなことを考えつつ、倒れている
…そこには、何万の兵と共に、因縁のあの男が血にまみれた剣を振りかざしながら、立っていた。
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