第14話 魔王カルラ
ん?なんだこのプレッシャーは?!
《マスター、高濃度の魔力の塊が街に近づいています!》
なんだと?!街に落ちたら困る、街の上空に来る前に落とさないと!
新築の魔王城ならぬ魔王殿のお披露目会をしようとしていたところなのに!
「何か近づいてるみたいだからちょっと行ってくる!」
「魔王様!お気を付けて!」
建築士の声が聞こえたが今は急がねば。
よし、一応街の外に落ちるように外壁を出られた。空を飛ぶの結構難しいんだよな。
そして肉眼でも飛翔体が確認できる位置まで来た。ん…?あれなんか生物っぽくね?
《イエス、マスター。どうやら高濃度の魔素を纏った
ま、魔王?!
さっそく街潰しに来たの?!早くない?!
すると彼女(?)はこちらに気づいたようで飛行速度を落とし、俺の目の前で止まった。念の為に街を出る時から魔人に姿を変えている。ラティル、一応分析してみてくれ。
《魔力がかなり濃いです。マスターと同等かやや多そうです。》
うーん、やばそうだなー。
「やあ、君が新しい魔王の…えーっとなんだっけ?あ、そうそうレミー君?だっけ!初めまして!」
「レインです。貴方は魔王カルラ殿で間違いないか?」
「お、そうそう!私カルラ!獣人の国の王だよ!」
こ、このバカそうな女の子が八魔王第2位…。
黄色がかった長めの髪に低めの身長。
…まあそれは置いておこう。
「それで、どうしてここへ?」
「そんなもの決まってる!新しい真なる魔王が誕生したと聞いたから気になって飛んで来ただけだ!」
「…え?それだけ?それだけのために飛んできたの?」
「うむ、もちろん!無害そうなやつで安心したよ!」
あー、うん。そうか。
「なんだ、それだけか。よかった。じゃあ要件終わったみたいだし、失礼します。」
「おい待ちたまえよ少年。土産を持って来たんだ、街の様子見くらいさせてくれたまえよ。」
うわ…面倒くさそう…。
「おっほーー!めっちゃ綺麗な街ー!」
「こういう和風みたいなのあまり見ないのか?」
「うむ、ワタシの国には獣人しかいないからな、
「そうかい。」
お騒がせ魔王のカルラは一通り街を散策していった。本日お披露目会予定だった新築の我が家はカルラ来訪記念の宴会場にされたのだった。
ひとしきり飲み食いして暴れたカルラは翌日の昼に帰っていった。ちなみにカルラが持ってきた土産とやらはかつて「氷神」と謳われたらしい神鳥の死骸だった。死骸を土産に持ってくるって何だよ。
それにしてもあの魔王が「
カルラが帰った翌日、鍛冶屋と細工屋の両方から完成の連絡が来た。
連絡を聞いた俺はまずはウッキウキで鍛冶屋に向かった。
「おう魔王様よ、これでどうよ。会心の出来だ!」
そう言っておっさんは重そうにそれを持ち上げる。
黒に統一された柄と鞘。いわゆる黒鞘と呼ばれる類の刀だ。その重みを感じながら抜いてみるとうっすら赤みがかった刀身が綺麗な色を映し出す。
「これは…素晴らしい業物だ。武器の階級にしたら神器クラスに近い。」
「さすが魔王様だな、よくわかってんじゃねーか。通常人間や魔物が戦闘で使用するのがノーマル。優れた者達はエクストラ級の装備をしている。だが魔王や勇者になるとレジェンド級や世界に数本しか存在しない神器なんかになる。俺が鍛えたそいつは魔王様の魔力と剣にしては硬すぎるくらい優れた材質のせいでレジェンドを凌駕するような代物になっちまった。もうこうなると自分がこえぇや。」
そう言いながらケラケラ笑うのだから、このおっさんは面白い。
「ありがとうおっさん。こいつは大切に使わせてもらう。」
「そうだ、その刀の銘は、結構悩んだんだがな…結局緋色の刀身に惹かれちまってな、妖刀・
「緋紡…いい銘だ。よろしくな、緋紡。」
しかしあのおっさんほんとにすごい職人だったな。まさかレジェンドを超える代物を作れる職人がいるとは。
ここ最近で完全に和風化したレインは、新たな刀を腰にさす。黒が基調となり所々赤い装飾が施されている和装にピッタリの黒鞘だった。そしてこれでまた1段階和風魔王に磨きがかかった。
次は細工屋だ。
あれができれば偽装にかける消費魔力が減るので本当になんとかしたかった。たかだか少しの魔力の違いではあるがそれに命がかかるかもしれないと思うとやはりどうしても気になってしまうのだ。
「おじゃましまーす。」
「あら来たわね魔王様。ご所望の品はこちらよ。」
そう言うと店主は木箱を開ける。
「おおぉぉぉぉぉ!これはいいな。」
「そうでしょ、デザイン通りに、なおかつイメージに合うように塗装もしたわ〜。塗装代はサービスにしてあげる♪」
「ありがとう店主。素晴らしい品だ、これからも店に来させてもらおう。」
「ご贔屓に〜!」
さっそく仮面を付けてみた。いや、もう完全にかっこいいやつじゃないか。だが待て、見た目だけが良くても仕方ないのだ。偽装スキルを効率よく使うための仮面なのだから。
さっそくエンチャントしてみるとしよう。
えーと?仮面に魔力を流しながらそのスキルを使うだけ、と。
さてさてと人気のない場所で実践してみた。
結果、いつも通りに偽装ができて、なおかつ目論見通り消費魔力が減っている。しかも半分くらいに。これはとてもいい買い物をしたぞ!
───────────────────
とある国の王都、王城の中にて。
「おい勇者ネル、初任務を与えてやる。貴様、例の街へ行ってこい。魔物は悪だ。全て殺せ、皆殺しにしろ。」
「……承知しました。」
命令を下した方はにやけ顔で、命令を受けた方はやや悲しそうな顔で、それぞれの思いを心に留める。
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