第7話 山の主

そこからはとりあえず苦痛な日々だった。毎日自分よりも超格上の魔物をどうにかして倒しまくり、何度やっても勝てなくなったら竜帝ジジイの鬼特訓。体術に剣術。スキルを必要としない魔法など色々スパルタにやらされた。だがこれも全てあの忌々しい勇者を倒すため。そう思って毎日耐えぬいた。

修行としか呼べない訓練が終わるとラースが毎日ご飯を作って待っていてくれる(竜帝の力で屋敷と穢れた山の転移ができる)。ラースの存在にどれだけ助けられたことか。いつか必ず恩を返さないと、そう決意した。

訓練を始めて数日、ユニークスキルがいつの間にか芽生えていた事に気付く。実は勇者と対峙した際に芽生えていたのに今の今まで気づかなかったのだ。

ユニークスキル「偽」

姿をこれまで見た生物に偽装したり、これまで見たことのあるスキルを見かけ上のみ真似て使用できる。なお偽装した際、偽装した生物の体力や魔力などは反映されるがユニークスキル以上のスキルは反映されない。

ユニークスキル「無限図書館」

知識の箱。世界の理なども調べられるが、全知のスキルではない。未来の事象に関することや気になるあの子のスリーサイズなどは載っていない。あくまでこの世の事典が詰まっている図書館。

ご覧の2つである。

『ユニークスキルとは個体それぞれに与えられる可能性のあるスキルで、強い魔物や強い人間はだいたい持っている。全ての生物はスキルを有しているが、ユニークスキルは全ての生物が持っているわけでなく、持っているからと言ってその個体が強いとも限らない。』と、このように疑問を分かりやすく解説してくれるのが「無限図書館」だ。

「偽」のスキルはそんなでもないが「無限図書館」はとんでもなく便利なスキルだ。個体にもよるが相手の弱点なども知ることができる。戦闘がかなりしやすくなるぞ!



竜帝は悩んでいた。

レインにはいずれ真実を告げなければならない時がくる。だが、こうなってしまった上で話すべきなのだろうか。

…いや、話さなくてはならない。それが自分の負うべき業というもの。レインにどれほど嫌な顔をされても、蔑まれても、彼のために、そして自分のために、全ての真実を告げよう────。

その竜帝の静かな決意は、果たしてレインに届くのだろうか。


──────────────────


訓練という名の鬼畜修行開始から、今日で10年。レインはもう15歳を迎えていた。山の頂上は雲より高く、吹き付ける風と陽光はまさしく霊峰そのものであった。結果、純竜種を14匹狩ることに成功しやっと頂上に登り詰めたというのに、そこには誰もいなかった。


この山の主が居るんじゃなかったのか?と思っていると後ろから強力な魔力を感じ振り返る。


「ったく、魔力感知を覚えんのにどんだけかけてんだ。」

「なんだ竜帝ジジイか」

「なんだとはなんだ!あと前から言おうと思ってたがジジイってなんだ!確かに古代龍だからめっちゃ老いてるけどジジイはないだろジジイは!」

「いつも通りやかましいな、それよりここに山の主が居るんじゃなかったのか?どう見ても誰もいないぞ。」


すると竜帝は人化を解いて竜帝としての姿になった。


「いや、そんなことはない。ここにおる。」


実を言うとレインは知っていた。この山の主が誰なのかを。当然だ、「無限図書館」で見てしまったのだから。

そもそも竜帝の魔素漏れで生まれた魔物達の主なのだから、そんなもの答えは奴しかいない。


「さあかかってこいレイン。この竜帝ゼロスとの決着で貴様の修行の成果、存分に発揮してもらおう!」

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