第238話 本当なのか? 嘘なのか?(17)

「えんねぇ? おさむ君? こんなに沢山の落ち牡蠣をもらって?」


「ん? ああ、ええでぇ、山田~。女房と二人仲良く食べりゃ、ええぇ~。それに? 山田~? それぐらいの量なら。山田一人でも食べられようが?」


 ……ん? あれ? あれあれ? 可笑しい? どう言うことだ?


 と、思いながら。山田瞬と、おさん狐さま。おさむ君を凝視すれば、と、いいたところではあるのだが。山田瞬は、おさむ君が、己の妻に言い寄るタイプの男性(ひと)ではないとわかっているから。


 ちくわのおじさん。たぬきの御老体こと、坪田御老体の時のようには、警戒心や猜疑心、不信感をあらわにしないと言うか? 表に出さないのだよ。


 だってさ、坪田御老体の場合は、ほとんど本気モード。齢九十二歳の物の怪であろうとも、『触らしてくれ!』、『やらしてくれ!』、『お願いだ!』の会話。嘆願を山田瞬は、良く耳にしているけれど。おさむ君の場合は、只異性。女性と会話ができるだけで満足なところがあるのを山田瞬は知っているのだ。


 だってさ、おさむ君が『コブ付き』、『彼氏』や『夫』、『男友達』同伴の女性達と多々。それも? 長々と会話、だけではなく。おさむ君が親方、妹さんや義理の弟さん。甥っ子さん達が販売をしている落ち牡蠣を勝手に拝見、持ち出し、貢ぎ、贈り物、だけではなくて。コーヒー屋のお兄さんのところのコーヒーや山田瞬が販売している芋けんぴなどを購入し。貢ぎ、送りもしながら楽しそうに会話を長々している様子を、もう数年以上も凝視しているから。おさむ君の場合は、坪田御老体の時のようには警戒心を強めない。


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