第231話 本当なのか? 嘘なのか?(10)
まあ、こんな感じだ。おさむ君の反応はね。山田瞬が思い描いていた反応とはずいぶんと違う。
そう、山田瞬は? おさむ君に、おさん狐さまを見せ、自分の妻だと紹介をすれば、最低でも驚嘆……。
もうそれこそ? たぬきの御老体こと、坪田御老体と変わらぬぐらいの様子──。おさむ君自身の身体を使い。ジェスチャーしながら驚愕。驚嘆をおさむ君が吐くこと間違えないと思っていたのだよ。
でも、山田瞬の思いとは裏腹に、『そうか、幸せになれ』と、簡易的に台詞を漏らして。この場を去ろうと試みているようなのだ。
だから山田瞬は、この場を去り行くおさむ君の背に向けて。
「おさむ君、どこいくの?」と。「もしかして、帰るの?」
そして最後は?
「もしかして、パチンコ?」と。
おさむ君へと訊ねるのだよ。
でも、おさむ君はこんな調子だよ。後ろを少しばかり振り返り。
「ん? ちょっとなぁ?」
と、だけ。山田瞬へと漏らすと。そのままこの場を後にしたのだ。
だから山田瞬は話し相手がいなくなり少々寂しい想いはするが。おさむ君にも色々な用事……。
五味の市の店内で販売をしている身内の人達の手伝い。商いを手伝わないといけないのだろうと山田瞬も思うから。致し方がないことだと諦めて、彼も仕事……。
そう、己の妻である、おさん狐さまと。彼女のお腹にいる【ややこ】の為に商い──。販売業を始めだすのだ。
「さぁ~。いらっしゃい~。いらっしゃい~」と。
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