第121話 マスク(23)

 と、言う事で~? 我らがこんなことを思案していたら~?


 二人~?


 いや~、三人かな~? 話しの間に割って入るように山田瞬が……ではなく~? おさん狐さまの艶やかな唇が開く。


「あなた~? 大島殿の申している通りで、本当にアメリカや中国では、新型のインフルエンザや謎のウイルスで大変な事になっているみたいよ~。わらわも~。他国の知り合いの妖怪(者)から~。教えてもらったの~。だから~。マスクをちゃんと着用するようにとね~」と。


 相変わらず妖狐の女神さまは、自身の売り場……。販売ブースを行き交う者達や、坪田御老体、大島のオジサン達……。鳥や猫、犬なども含めて。この世にオスとして生を受けた者達の、脳が蕩けてしまうような、甘くて官能的な声色で告げてきたのだよ。


 ……ッて? おさん狐さまの夫である山田瞬の脳は蕩けないのか~。だって~?

 あああ~、山田瞬~。彼の脳はもう~。おさん狐の甘くて淡い~。官能的な声色での台詞を聞いても蕩けることはないよ~。


 だって~? 彼自身は、おさん狐さまとの夫婦の営みに関して記憶に無いから。おさん狐のお腹にいる子は自分の子でないと言い争い。先程二人の脳裏で、夫婦喧嘩をおこなっていたように。山田瞬の脳は、おさん狐さまの甘くて淡い~。まろやかな~。官能的な声色での台詞を聞いたぐらいでは脳は溶けないのだ。



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