第116話 マスク(18)

 と、なれば?


 山田瞬は、自身の妻であるおさん狐から直接脳へと、攻撃を食らい続けている最中だから。大島のオジサンのくどい言葉に対して彼は反発……。


『他人のことは放っておいてくれ~。自分達夫婦は今それどころではない~。夫婦喧嘩の最中なのだから~。マスクがどうとか~? 謎のウイルスがどうとか~? そんなことは、今はどうでもいいのだよ~。そんな世間がどうの? こうの? よりも~。このままおさん、を僕が放置していたら~。自分達夫婦は離婚をしてしまうようになるので~。自分達夫婦のことはいいから~。放っておいて欲しい~』と。


 自身の心の中で思い。彼は大島のオジサンへと不満を告げたい衝動に駆られている最中……ではなく?


 大島のオジサンの言葉が天の助けだと、山田瞬は瞬時に思い。自身の心の中で、おさん狐さまと。彼女のお腹にいるであろう、彼の子へ労り(いたわり)を思う。


(おさんと、お腹にいる僕の子の為に。家の大黒柱である僕がマスクをつけて、謎のウイルスやインフルエンザの予防をしないといけない~。もしも僕に、何かあれば? おさんと子供が路頭に迷うことになるから。大黒柱の僕がしっかりしないといけない~)とね。


 でッ、その後は? 先程大島のオジサンから受け取った紙のマスクを慌てて、自身の顔へと装着──。


 そして変身をする。

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