第115話 マスク(17)

 と、ぐらい? しか思わなかったみたいだよ。


 だから助かったようだよ。山田瞬は……。


 と、いうよりも?


 山田夫妻はね。


 う~ん、でも、山田瞬は? 坪田御老体を誤魔化すことはできたのだが。自分の奥さまである、おさん狐さまの、大○神のような怒りを鎮静化することが中々できないでいるから。


 彼は『困ってしまって~。ワンワン~』状態なのだよ。


 だって彼の脳内には相変わらず、おさん狐さまからの、傍からはわからない直接攻撃が荒らしく。


 ……ではないね?


 女性を武器にした泣きながら拗ね、不満の台詞攻撃が仕掛けられている最中──。


「わらわは~。瞬が悪いから~。黄泉の国へと今直ぐ帰る~。もう二度とこの世界には来ぬから~。覚悟しておけよ~。瞬~。絶対にお主の子を見せてやらぬからなぁ~。父母殿の共々~。今日で瞬とは離別じゃからな~。覚悟をしておけよ~」と。


 山田瞬の脳内へと『チクチク』と、針を刺すように攻撃が仕掛けられている最中なのだよ。


 まあ、そんな最中の夫婦へといきなりこんな台詞が飛んでくる。


「山田君~。おめでたならば~。尚更だよ~。奥さんと共々マスクをしないといけないよ~。アメリカや中国ではもう既に、謎のウイルスやインフルエンザで、沢山の死者や重症患者がでているのだから~。奥さんのお腹の中にいる赤ちゃんのことを考えたら~。二人揃ってマスクをしないといけないよ~」と。


 大島のオジサンから、山田夫妻へと注意──!


 そして? 山田瞬におさん狐さまと。彼女のお腹にいる子への労りを持つようにと諫めの言葉も含めた台詞が飛んできたのだ。



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