第114話 マスク(16)

 でッ、始めだすと彼は、自身の口を開いて。


「山田~。お前~。母ちゃんに~。お腹の子は『自分の子なのか?』と、訊ねたのだろうが~?」と。


 相変わらず苦笑しながら問いかける。


 すると? 他人の目からは挙動不審に見える、おさん狐さまの夫である山田瞬は? 坪田御老体の問いかけに対して、慌てふためきながら。


「な、何でおじさんは、僕とおさん、の会話がわかったの……?」と。


 自分とおさん狐さまとの、脳内での夫婦の妖力による会話……。夫婦喧嘩という奴が、『何故おじさんには聞こえてきたのか?』と、訪ねてしまったのだよ。


 自身の妻である、おさん狐さまの女心を。彼は傷つけてしまっているから動揺をしていてね。ついついと坪田御老体へと訪ねてしまったようだ。


 う~ん、でもね?


 流石に齢九十二歳になる坪田御老体でも、山田夫妻が、人が持ちえない妖力という奴を使用して。二人の脳内で夫婦喧嘩をしていると言う発想は思い付かないから。


 山田瞬の話しを聞いても?


(山田は儂に何を言っているのだ? 訳がわからない……。あぁ~、もしかしたら? 自分の母ちゃんが拗ねているから動揺をしているのかも知れん……? だからこんな訳の解らない言葉を儂に告げたのかも知れない……?)

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