第113話 マスク(15)
でッ、その最中に傍から見れば大変に可笑しい様子に見えるのだよ。
山田夫妻の喧嘩がね~。
だって~? 先程からおさん狐さまは、自身の目を何度も細めては、怒り顔──。
それこそ~? 大妖狐の如く、凄んだ恐ろしいお顔で山田瞬を睨みつけている状態が続いたかと思えば?
今は先程の言い争いの終わりの後だから。彼女は今にも泣きだしそうな、潤んだ瞳……。
気弱な様子で山田瞬を見詰めている状態なのだよ。
でッ、自分の妻でもある、おさん狐さまに、『本当に俺の子なのか~?』と、いった内容に相当する大変に失礼な台詞を告げた山田瞬はと言うと?
最初の、おさん狐さまの怒り顔の時は?
妻に対して恐れ慄き、たじろぐ状態でいたのだが。
今は、自分の妻が、今にも他人の目の前で泣きそうな様子だから。自身の顔色を変えながら、『オロオロ』としている状態なのだ。
だから? 傍から山田夫妻を見ると──。
本当に二人の様子は、我等が見ても、挙動不審に見えるから。
タヌキの大妖怪……ではなく?
坪田御老体が山田瞬へと『何をしているのだ?』と、訊ねたのだが。
彼は齢九二歳になる大妖怪だから、男女の恋愛には詳しい。
だから山田夫妻の様子を傍から見れば──。
二人が無言で夫婦喧嘩をしていることぐらいは察しがつくし。その理由が何なのかも? 予想がつくのだ。
だから坪田御老体は、自身の口の端を『ニヤリ』と吊り上げ──。
『ヒッ、ヒッ、ヒッ……』と、苦笑を始めるのだよ。
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