第110話 マスク(12)

 だって~、山田瞬が、おさん狐さまに、自身への猥褻行為に対して、責任をとってくれと嘆願をされたのは一度切り──新年の初夢、夢見の後の一回限りなのだよ。


 それに? 実際のところ山田瞬は? その時もその後も、おさん狐さまとは夫婦の交わり。営みをした行為の記憶がないのだ。


 だからタヌキの大妖怪……ではなく。坪田御老体に。自身の妻であるおさん狐さまが妊娠している可能性があるとか?


 おさん狐さま自身が、自身の頬を桜色に染め──。嬉しそうにしな垂れ掛かり甘えてこられても、彼は全くと言って良い程、実感が持てないでいるから。


 彼は、自身の心の中で『困ってしまって~。ワンワン~』と、泣きたくなる衝動に駆られる。


 と、同時に、彼は『ハッ!』と、我に返る。


 それも~? 自身の心中で『い、いけない~。ごめんね~。おさん~。僕自身が責任感の無い台詞を漏らしてしまって~。本当にごめんよ~』と、おさん狐さまにたいして、謝罪の台詞を思い浮かべるのだよ~。


 すると直ぐに、彼の脳裏に言葉が。


『わらわ達妖狐のメスは、オスの子種で受胎をし。自身が妊娠すれば、直ぐにわかるのだよ~。だからわらわのお腹の中には、瞬の子が間違え無しに宿ったのだよ~』


 と告げてきたのだ。


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