第108話 マスク(10)

 となれば? 今度はタヌキの御老体が、おさん狐さまへと化かされるのだよ。


 だから坪田御老体の口から。


「そうか~? だから山田の女房は~? 自分のお腹に、山田の子を身籠ったから~。この度は海外へと帰宅をせずに。岡山に残たんやなぁ~?」と。


 齢九十二歳の御老体が、おさん狐さまの朝からの様子と山田瞬への接し方の態度と。彼女の艶やかな容姿を『ジ~ッ』と、真剣に見詰め、観察した結果を踏まえて、問いかけてきたのだよ。


 すると? おさん狐さまは、自身の頬に両手を当てて──『ポ~』桜色に染めながら、照れ始めるのだよ。


 と、なれば?


 一番驚愕して、慌てふためくのは、おさん狐さまの夫である山田瞬本人なのだよ。

 だから彼の口から。


「えぇ、えええ~。でも~? 僕はおさんと未だぁあああ~」


 と、叫んだところで彼は。自身のお口にチャック──。閉め、閉じてしまうのだよ。


 だって彼は未だおさん狐さまとの夫婦を指摘されたことが一度しかない。


 

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