第102話 マスク(4)

「うん、そうだね~。去年迄の一人で販売をおこなっていた山田君だったら。先程のお客さまの大きな山だと対処するのに大変だっただろうね~」


 山田瞬の、おさん狐さまを絶賛する言葉を聞いた大島のおじさんも、軽く頷きながら納得といった表情をしながら言葉を返したのだ。こんな感じでね~。


 だから二人の会話……。自分自身を絶賛する内容の話しを、夫である山田瞬の後ろで聞いていた、おさん狐さまも大変に嬉しそうな表情をしているのだよ。


 う~ん、でも?


 遠目からではあるが、先程の、おさん狐さまの妖狐としての妖艶な振る舞いではなく。商いの神さまとしての神々しい振る舞いや神業的な活躍を見ていれば。


 妖狐である、おさん狐さまならば、二人の会話に割って入って。自分自身を自画自賛しそうな気がするのだが。


 彼女はそんなことはしないで、古き良き日本の妻らしい振る舞い……。


 夫である山田瞬の後方で控えめに聞いているのみなのだよ。


『ニコニコ』と、温かい笑みを浮かべながら嬉しそうにね。



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