「お～い！　お～い！　こっちじゃ～！　こっちにこい～！」

　う～ん、相変わらず聞こえてくるね～。

　岡山県備前市日生町、五味の市の名物の一つである、坪田御老体の声を大にしたかけ声と呼び声がね～。

　また、その声を大にした呼び声に負けぬようと声を大にして叫び競る声色──。

「さぁ～！　いらっしゃい～！」

　そう～、山田瞬の自身が使用する販売ブースの前と横とを通り過ぎていくお客さま達へと、呼びかける声が聞こえてくる。

　まあ、そんな最中の二人……ではないか？

　去年２０１９年の今頃……。新年早々の初売りならば、そうかも知れないが。今の山田瞬の真横……。

　いや、後方……。

　あれ？　また山田瞬の真横に並んだ。

　まあ、とにかく、右往左往と、狭い販売ブース内を多忙に動きまわり。

『縁起が良い～！』と、自身を拝みにくる……ではないね～。

　夫婦二人で仲慎ましく商い……。

　そう～。豆菓子、乾物、ドライフルーツを購入しにきたお客さま達を多忙に対応している。

　おさん狐さまの妖艶で美しい和服姿の艶姿が、今年２０２０年の初売りにはあるから。

　山田瞬の販売ブースも昨年までとは様子が違うのだよ。

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