第98話 新年早々縁起の良い? 狐と狸の化かしあい?(18)
また、通路を挟んだ隣のブースで、自身の神々しい妖力──。社に行って賽銭をしなくても頂くことができる。
『新年早々縁起の良い福』を放ちながら、お客さまの商品とお金の受け渡しをおこなっていた、おさん狐さまなのだが?
タヌキの大妖怪の販売ブースを見て──。
(……ン? ムムム~。ナヌ~?)
と、自身の心の中で思う。
また思うと、妖狐さまは?
「くそ~。たかが、若輩なタヌキの子せがれの分際で、悠久の時を過ごし、生きながらえてきたわらわに楯突くとは~。笑止千万~!」
と、荒々しく独り言を呟くのだよ。
「ん?」
「えっ?」
「何?」
おさん狐さまの荒々しい独り言を聞いたお客さま達は、声を揃えるように。彼女へと問いかける。
すると? 今の今迄、自身の眉間に皺を寄せ、怒りをあらわにしていた、おさん狐さまなのだが。
「ウフ~」と、神々しい笑みを浮かべ──!
「何でも御座いません~。お客さま~」
と、皆に告げる。
でッ、告げ終えると、おさん狐さまは、自身へと並ぶお客さへと、また商品とお金の受け渡しの作業を再開し始める。
今度は、こんな縁起の良い福を含む台詞を漏らしながら。
「本当に新年早々~。我が家の商品を購入していただき、誠にありがとう御座います~。今年も良い御歳で~」とね。
でッ、また、おさん狐の福のある声色に続くように、タヌキの大妖怪の方も。彼独特の声音──。妖力を込めた福のある声色で。
「今年もよろしく、たのむなぁ~」
と、お客さま達へと嘆願、告げるのだよ。
でッ、また、そんな二人……。『狸と狐の化かし合い』を傍から見る山田瞬は、2020年も良い年になりそうだと思うのだよ。
もう自分達の近くまで、謎のウイルスの恐怖が迫っているとも知らずにね。
◇◇◇◇◇
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