第96話 新年早々縁起の良い? 狐と狸の化かしあい?(17)

 自身が五味の市での販売後に、毎晩夜遅くまで焚き作った。新鮮な牡蠣の佃煮は、生の牡蠣のむき身を購入するよりも大変にお買い得な商品だとね。


 それも、声を大にして叫びながら、お客さま達が悟るように告げていく。


 他にもこんな台詞を交えてね。


「特にこの牡蠣の佃煮は、儂が毎晩炊いて作った。手作りの佃煮だ~。だから他所に行って売っていないし~。この佃煮の味は、誰も真似ができん~」


 と、告げ。


「だから~。日生に遊びにきたお土産に買うてくれぇ~」


 と、叫び。


 その後は、お客さま達の顔を見渡しながら。


「お願いだから~、買うてくれぇ~」と。


 坪田御老体は、最後に気弱な声色で嘆願をするトークを仕様する。


 まあ、御老体の販売トークを傍から見ればわかる通りで。ここまで彼の様子を見ても──。


 坪田御老体自身が、特にこれといって、他の販売者の者達と比べても、抜きでているようには見えないのだ。


 う~ん、でもね?


 我らが坪田御老体のことを『タヌキの大妖怪~!』だと声を大にして呼び呼ぶのは。この後のお客さま達の反応と様子……。


 すでにタヌキの大妖怪である坪田御老体から、竹輪を購入しているにも関わらず。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る