第92話 新年早々縁起の良い? 狐と狸の化かしあい?(13)

 だってこの後に坪田御老体が。


「そうか、そうか~」と、頷きながら、お客さま達へと言葉を返し。


「じゃ、竹輪を、買う(こう)てくれ~」


 と、囁き始めると。


「う~ん、仕方ないなぁ~。おじさん~」


「買うわ~、おじさん~」


「じゃ、一袋、おくれ~」と。


 今迄眉間に皺を寄せ、腕を組み──。購入思案をしていたお客さま達が。


 最初のお客さまの「致し方がない。おじさんの販売する竹輪だから買うわ~」の、鶴の一声とでも言った方がいい台詞……。


 その台詞に連動して、竹輪を購入し始める。


 だから我らは、そんな御客さ達の様子を凝視しながら『坪田マジック?』


 う~ん、それとも?


 今年九十二歳になる坪田御老体だから?


 もう既に彼は人ではなく、物の怪と化している状態──。


 だから我らが先程申した通りで、彼はもう既に妖怪化している状態──。


 そして自身の身体から、お客さま達が商品を「買おうかな~?」と、思いたくなる妖力を放出──。拡散しているのかも知れない?


 と、我らが思うくらい。


 お客さま達は何の疑問も抵抗もなく、竹輪を購入していくのだよ。


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