第91話 新年早々縁起の良い? 狐と狸の化かしあい?(13)

「どうや~? 美味いやろぉ~?」


 と、囁き。購入思案中のお客さまの顔色を伺う。


 でッ、その後は?


「家の竹輪は、白身の魚ばかりを使用して練っているから、大変に柔らかく。そして美味しいやろう~?」


 坪田御老体は、笑みを浮かべ、甘え声色を駆使しながら。やはり囁くように訊ねるのだよ。お客さま達へとね。


「うん、美味しい~」


「ほんまに美味しいなぁ~」


「うん~」


「本当におじさんの言う通り。柔らかいわ~」


「うん、確かに柔らかいわ~」と。


 今年九十二歳になる坪田御老体の『妖力』だろうか?


 彼はどことなく、狸か猿に似ている気がするので?


 その類の妖怪なのかも知れない?


 だって? 坪田御老体の販売方法なのだが?


 我らも先程から遠目で彼を見て確認をしてはいるのだが。


 う~ん、確かに? 御老体は、他の販売者達よりも押しは強い気もするのだが。販売トークの内容は、余り変わらない気もするのだ?


 う~ん、それでも、このように? 自身の眉間に皺を寄せ、腕を組み──。思案を続けていたお客さま達の顔が緩み始めるから。我らも不思議でならいのだよ。



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