第89話 新年早々縁起の良い? 狐と狸の化かしあい?(11)

 先ず坪田御老体は、「いらない~」と、拒否したお客さま達に対しては直ぐに、残念そうな声色で、「そうか~。またよろしくなぁ~」と、声をかけ手を振るのだよ。


 う~ん、でも?


「どうしようか~?」と、購入思案中の声を漏らしたお客さま達は、彼は逃がすようなことはしない。


 まるで獲物を狙う、百獣の王ライオンのような鋭い眼差し──。


 そう~、御老体自身の顔の表情自体は緩み笑みを浮かべてはいるのだが。


 彼の瞳自体は、鋭い眼光を放ったままなのだよ。


 まあ、そんな状態の坪田御老体なのだが?


 彼は、竹輪の購入思案中のお客さま達に対して、今度はこんな台詞を囁くのだよ。


 それも先程と一緒でさぁ~。甘え声色を使用しながら囁くのだよ。


「今家の竹輪を購入してくれたら~。一本まけるから~。いらんか~?」とね。


 自身が販売をする竹輪が五本入った袋の口を開いて──。


 彼はもう一本竹輪を追加──。サービスをおこなうジェスチャーをしながら、坪田御老体はお客さま達へと囁く。



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