第87話 新年早々縁起の良い? 狐と狸の化かしあい?(9)

「食べていけ~」


 と、声をかけ──。陶器の器を向ける。


 まあ、器と言っても、只の器ではない。


 器の中には輪切りにされた竹輪が多々入っているのだ。


 それをお客さま達に、『試食はいらぬか?』と、勧めているのだよ。


「いいえ~。よろしいです~」


「いりません~!」と。


 坪田御老体のお店で販売をする竹輪の試食対してこのように、そっぽを向き拒否をする者もいれば。


「ありがとう~」


「すいません~」


 と、お礼を告げながら。竹輪の試食を受け取るお客さま達もいる。


「美味しい~」


「美味い~!」


「うめぇえええ~」


 坪田御老体が持つ陶器の器の中にある竹輪の試食──。


 それを受け取り、自身の口へと運んだお客さまの中には、今のような竹輪の味に対して絶賛の言葉を漏らし、ワッと、騒ぎ始めるお客さま達もいる。

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