第77話 2020年の初売り(14)

 まあ、そんな新婚ホヤホヤの二人のことを新年早々から、我らも遠目からではあるのだが、見て確認をすれば心が躍るし。『二人ともお幸せになるのだよ~』と、温かい声をかけたくなるものだ。


 と、我らが思うと同時に、ふとあることを思い出すのだ。


 山田瞬と長年かけて言い争いをしていた坪田御老体……。彼は今何をしているのだろうか?


 だって~。三人の和気藹々とした会話は未だ続いているのに、御老体だけは放置……。忘れられた存在になっているのだ。


 と、我らが思っていると?


(あっ? あれ? 御老体は未だ呆然とした状態でわらわを見詰めているようですね~?)


 う~ん、どうやら? おさん狐さまが、相変わらず呆然としながら沈黙……。自分自身に魅入っている坪田御老体のことを気がついたようだ。


 でッ、彼女は気がつくと、今度は自身の脳裏でこんなことを思う。


(ふふふ~。本当に仕方のないお子ですね~。この子は~)と。


 齢九十二歳の坪田御老体を彼女は完全に子供扱いするのだよ。


 まあ、それは、それで、仕方がないことかも知れない?


 だっておさん狐さまは、永久の年を過ごしてきた大妖狐だから。坪田御老体のことを小さな子供に見えるのは仕方がないこと。

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