第73話 2020年の初売り(10)

 御老体自身は、2019年の三十日の商いの最中に。


「山田~? 奥手の山田は~。今年は彼女も嫁さんもできなかったけれど~。来年こそは、彼女を作り、結婚をしろよ~。わかったな~? 山田~?」


 坪田御老体は、山田瞬の親や親戚でもないのに。他人である彼へとお節介を焼いては、不快感を募らせ迷惑をかけていたのだ。


 それも? 2019年の商いおさめの三十日だけではない。


 2019年の間に、山田瞬へと何度お節介を焼いては、彼の逆鱗に触れて──。


「もう~。おじさんは~。僕のことなど放っておいてよ。お願いだから~。僕だって彼女が欲しくはない訳じゃない~。只理想が高いから~。彼女ができないだけ~」


 山田瞬は、『ちくわのおじさん』こと、坪田御老体へと何度も不満をつげたのだ。


 でッ、その都度御老体は、山田瞬へと苦笑しながら。


「そうか~。山田は理想が高いから彼女や嫁さんができないのか~」


 と、告げていたのだ。


 だから山田瞬もその都度、「うん」と、不満のある顔で言葉を返すのだが。


 坪田御老体は更に山田瞬へと苦笑──。


『ククク~』と嘲笑いしながら。


「山田~。お前は、そんな事ばかり言っておったら~。生涯独身でおらんといけなくなるぞ~」

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