第72話 2020年の初売り(9)
今日の朝までは彼女の髪や肩──。手を優しく振れ、握るぐらいしかしてくれない山田瞬に対して不満を募らせていた彼女……。
そう、おさん狐さまの容姿がそこにあるのだよ。
う~ん、でも? 今の彼女の美しく妖艶な笑みを見ればわかる通りで?
先程山田瞬に、スクラムの車中で、『生涯自分に寄り添い尽くして欲しい~』と、結婚の申し込みを受けて承諾をした、おさん狐さまだから、大変に御機嫌が良い。
だから坪田御老体へと満身の笑みを浮かべて、自身の夫(所有物)と、なった山田瞬共々、今年からは宜しく頼むと告げたのだ。
う~ん、でも? おさん狐さまの夫となった山田瞬共々、今年から宜しく頼むと告げられても。坪田御老体自身は、新年早々、寝耳に水が入るが如くの気分なのだ。
だって坪田御老体は、この五味の市の店頭ブースで昨年……。
2019年の大晦日前日……三十日迄、山田瞬と通路を挟んだ状態で、販売の商いをしていたのだ。
でっ、商いの最中に山田瞬の口から。
『おじさん~。彼女ができた~』
『おじさん~。結婚を前提にお付き合いをしている女性ができたよ~』
『おじさん~。僕、彼女ができたから~。結婚をしようと思うんだよ~』
と、事前に説明でもあれば、坪田御老体自身もこんなに動揺──。困惑などしないのだが。
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