第60話 2020年の初仕事前の車内の会話……(9)

(……ん? あれ? 可笑しいな……? おさんが僕に畏怖して怯えるほどの恐ろしい顔を。僕はしていないのだけれど……?)


 自身の顔をバックミラーへと映し確認をした山田瞬は、脳裏でこんなことを思う?


 そして思うと? 彼は直ぐに、助手席から自身へとしな垂れ甘える、おさん狐さまへと視線を変える。


 変えると山田瞬は直ぐに、彼女と目が合う──。合うと、おさん狐さまは、『クス~』と、妖艶に笑みして見せる。山田瞬へとね。


 と、同時に彼は、自身の脳裏で(狐に騙された……)と思う。


 思うと今度は彼? 幼少の頃に祖母から、何度も聞かされた。広島の昔話……。おさん狐さまが、絶世の美女へと変身──。旅人や殿さま、色々な男達のことを、自身の美貌を餌に騙す昔話を思い出すのだよ。


 そして思い出すと彼は憤怒……とはしないのだ。


 だって、おさん狐さまが先程、山田瞬へと告げた通りだよ。彼は愛する彼女の対して大変に甘く柔らかく、優しいので。


「もう~。おさん、は~。また~。僕のことを騙したのだろう~?」


 と、微笑みながら不満を告げる。また自分自身を騙したのだろうとね?



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