第54話 2020年の初仕事前の車内の会話……(3)

 でッ、山田瞬から話しかけられた、おさん狐さまはと言うと?


 自身の座る助手席の車窓から見える外の景色──。


 日生の漁師町の風景が珍しくて仕方がないのだろうか?


 落ち着きない様子で、『キョロキョロ』と車窓に流れる景色を興味津々に見ていたのだが。山田瞬に声をかけられたので。車窓から流れる景色を見る行為をやめて、彼の方を向き凝視──。


「ん? 瞬~。どうしたのだ~?」


 と、言葉を返す。


「おさんは、広島の三次に、以前住んでいたことがあるの~?」


 自分自身に言葉を返してくれたおさん狐さまに。山田瞬はこんなことを訊ねる。


 訪ねると直ぐにおさん狐さまからも言葉が返ってくる。


「ん? あああ~。遠いい昔ではあるが、アメリカ軍の空襲を逃れて、三次の山奥~。というよりも? 庄原の道後山の麓に疎開をして暮らしていたこともあるが~。瞬よ~。わらわが備後の山奥に住んでいたことがよくわかったな~?」と。

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