第51話 2020年……。新年の朝……。(9)

 まあ、こんな感じでおさん狐さまは、山田瞬へと不満を改善──。


 今後は自分自身のことを他人行儀ではなく。妻らしい待遇と振る舞い。呼び方も『おさんさま』ではなく。ちゃんと『おさん』と、名指しで呼ぶようにと告げる。


 でッ、おさん狐さまに待遇改善をしてくれと言い渡された山田瞬はと言うと?


「えっ?」と、気の抜けた嘆息を漏らすのだが。直ぐに自身の顔を緩ませて笑みを浮かべる。


 まあ、彼は笑みを浮かべると。


「おさん~。早く~。僕の横においで~。僕のおさんが作った~。世界一美味しい雑煮を一緒に食べよう~」と。


 おさん狐さまの要求通りの振る舞い。


 それも? 自身の片手の手のひらで、『ポン! ポン!』と、軽く床を叩き──。音を出し、急かしながら誘う。


 そんな自身の主人らしい振る舞いへと変貌をした山田瞬を、おさん狐さまは嬉しそうに凝視しながら──。


「あい~。瞬~。今いくからの~」


 と、言葉を返し。慌てふためきながら、汁椀へと、お玉で雑煮を掬い──。


 そして入れ終わると山田瞬の許──。真横へと並ぶように座のだよ。


 でッ、座り終われば、彼の女性(所有物)らしい振る舞い……。寄り添い甘えながら、二人仲良く雑煮を食するのだ。


 2020年の新年を祝うようにね……。


 今年は大変な年……。


 世界中が『謎のウイルス』の名の下に、動乱の渦に巻き込まれるとも知らずにね……。



 ◇◇◇◇◇


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