第47話 2020年……。新年の朝……。(5)

 う~ん、おさん狐さまは、そんな様子の山田瞬を不思議そうに見上げ──。


「瞬よ~? 立ち上がり~。何処にいくのだ~?」


 と、訊ねる。


 でッ、訊ねると、また直ぐに自身の艶やかな唇を開いて、「厠へといくのか~?」と、訊ねる。


「うぅ~ん、違うよ~」


 山田瞬はおさん狐さまの問いかけに対して、自身の頭を軽く振りながら。


「おさんさまの作った御雑煮をおかわりしにいくのだよ~」


 と、答える。


 すると? 今迄自身の顔を緩ませて、笑みを浮かべていた筈の、おさん狐さまの顔色が変わり──。


「し、瞬よ~。我が家の主であるお主が立ち上がり。自らおかわりを注ぎにいかなくてもよい~。わらわがおかわりを注いできてやるから~。この場で座っておれ~。よいな~? わかったか~? 瞬~?」と。


 自身で雑煮のおかわりを注ぎにいこうと試みていた山田瞬へと、西の大妖怪であるおさん狐さまは、家の主が自らおかわりを注ぎにいくものではないと。彼に諫めの言葉……。


 だからおさん狐さまが自ら御雑煮のおかわりを注ぎにいくと、山田瞬へと告げながら。その場を立ち上げる。


「えっ? そんなことをおさんさまにしてもらうのは、僕も忍びないのでいいよ~。自分自身でおかわりを注ぎにいくから~」と。


 おさん狐さまの行動を見て──。今度は山田瞬がおさん狐さまへと悪いから忍び難いと告げる。


 う~ん、でもね?


 おさん狐さまは、先程も山田瞬へと告げた通りで、この部屋の主……だけではないか~?


 自分自身……。おさん狐さまを古い絵本の中……というよりも? 妖怪や精霊達が暮らす黄泉の国から召喚をした山田瞬は、自分自身の主なのだからと、日本の古き良き時代の、清楚で控えめな大和撫子らしい台詞をおさん狐さまは、山田瞬へと告げて。彼の持つ汁茶碗を強引に奪い──。隣……。玄関と一緒になっている小さなキッチンへと雑煮のおかわりを注ぐ為に移動を始めるのだ。


 そんな彼女の背を凝視しながら山田瞬は、「ごめんね」と告げる。



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