第25話 大晦日の狐そばと昔話しの絵本? (6)

 う~ん、遠目から、彼の様子を見ていた我らも。彼が何故? 悩んだ顔をしているのかまでは、理由はわからない?


 だから山田瞬ではないが? 我らも、自身の両腕を組みながら。


『う~ん、う~ん』と、声を漏らすのだよ。


 すると彼の口がまた開く。


「先程大掃除の時にでてきた。おさん狐の絵本って? 実家からこのアパートへの引っ越しの時に、荷物に入れたっけぇ~?」と。


 山田瞬はこんな台詞を漏らしながら困惑……思案を始めだす。


 う~ん、そうなのだ? 彼は三年前に、自身の産まれ育った広島の街の親元を離れ、隣の県……。岡山県備前市の山間で、気楽な独り身の田舎暮らしを始めたのだ。


 まあ、山田瞬のことを、独り身の気楽な田舎暮らしだとは申したが。実際彼も年頃……。大晦日の独り身……。男性の許へと現れた美しい妖狐のCMを凝視すれば。彼の口からも自然とこんな台詞も漏れてくる。


「妖狐か~。いいな~。マジで羨ましいよ~。あああ~。僕の許にも~。ど○兵衛の、テレビコマーシャルみたいな美しい妖狐が現れて、僕に寄り添い尽くしてくれないかな~」と。


 彼の心の中に秘める独身男性としての寂しさ?


 まあ、年頃のオスである彼の邪な感情と想いをついついと口に漏らしてしまう。


 そして言葉を漏らしながら山田瞬は。先程何故か、今頃? 押し入れの奥からでてきた。おさん狐の絵本へ注目しながら。


「おさん狐は大妖怪で、化けるのが得意だから。ど○兵衛のCMみたいに。独り身が寂しい僕の許へと現れ、寄り添ってくれないかな~」


 と、また彼は、自身の邪な欲望心を言葉に漏らしながら、おさん狐の絵本へと邪念を込めるのだよ。


 まあ、山田瞬も、年頃の青年だから仕方がないことだけれど。


 まあ、余り、自分自身の欲望心を込めた邪念を、古い書物に込めない方がいいのでは? と。我らは、彼のことを遠目から凝視しながら想うのだが?


 まあ、これも男の性と欲望心だから致し方がないと思いながら? 山田瞬のことを我らは、温かく見守ることにするよ~。


 まあ、こんなことを我らが思いながらいると? 山田瞬は、今度は立ち上がり、コタツからでるのだよ。


 でッ、その後は、自身の暮らす部屋の玄関にあるキッチンへと向かう。


「僕もCMのように、ど○兵衛の蕎麦でも、年越し用に食べようかな~? そしたら~? あれでも~? 僕の許にもお狐さまがきてくれるかも知れない~」と。


 彼は苦笑しながら向かう。


 う~ん、でもね~? 玄関とキッチンとが繋がる扉のノブを握ると──。


「何てねぇ~」と、笑いながら言葉を漏らしたのだ。


 まあ、当たり前のことだけれどね~。



 ◇◇◇◇◇



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