第14話 今更ながらSNSを開始。そして、襲来。
「声がかっこいい」
「凄く好み。好き」
「最近推し始めました。カッコいいです!」
そんな内容が次々とSNS上で流れてくる。下にスクロールするのが止まらない。
やばい、これはやばい。顔が絶対やばくなってる。今絶対、ニヤニヤしている。
無言で淡々と感想を見ている私におっさんは喋りだした。
「おーい」
「……おぉ、ごめんおっさん」
「いやいや。それで、どうだった?」
「……すげぇな。まさか、こんなに見られてるとは思わなかった」
「じゃろ?まぁ、まだまだ少ない人数じゃがの」
おっさんはそう言うが、私を知らなかった30人以上の人が、たった一つのボイスでこれだけ興味を持ってくれている。何気ない「好き」という言葉が、ここまで嬉しく感じるとは思わなかった。あぁくそ、今絶対気持ち悪い顔をしてる。彼女達は声を好きと言ってくれてる。でもその「好き」という言葉が、自分の全てを褒められてる気がして嬉しかった。
「十分だよ。しかし、やべぇなぁ……めっちゃ嬉しい」
「ふっふっふ。まだまだ伸びるぞ?」
「はは、そりゃ大変になるな」
おっさんの言葉に相槌を打ちながらまだ見続ける。
今日はもうこれだけ見て一日過ごそうか。
……と、思ったけど、配信上でも皆に感謝の言葉を言いたいから程々にしておこう。
……もう少し見ててもいいよね?
「皆さんこんばんは。本日も始めさせていただきます。起きてるかーい」
:起きてるぞー!
:イェーイ!今日もやっていくぞー!
:フゥー!!【サキ】
:今日皆テンション高いっすね。
:ボイス販売されたからそりゃテンション上がるでしょ!
:マ?全然知らなかったゾ……
:チャンネルの概要欄に書いてるよ。
:そういえば生配信でしか情報言ってなかったっけ。
:ボイス販売お知らせの動画出したほうがいいですね。
:雹兄貴はSNSやらないんですか?
「ボイス買ってくれた人いるかな?買ってくれた人は本当にありがとうね。それと……あっ」
:あっ?
:お、どうしました?
:い?
:う?
:何か落とした?
:どうした?
「すみません、お知らせ動画、編集したのに出すの忘れてました」
:えぇ……
:まさかのやらかし案件
:ポンコツ雹夜さんと聞いて。
:ドSでやらかしとか属性高すぎません?
:可愛い。
:雹くん可愛いよ雹くん。
「配信終わったら投稿しときますので、宜しくおねがいしますね」
:了解。
:これはお詫び案件ですね。
:詫びボイスはよ。
:ん?今なんでもするって(先読み)
:おぅ早く罵倒するんだよ【サキ】
:偉そうに言っておいて求めるのが罵倒で草
:また罵倒兄貴か壊れるなぁ……
「ごめんね」
:いいよ
:全然いいよ。
:やばいキュンときた。
:素直に謝られると困る。いいよ。
:急なごめんね。は反則すぎる。
:鼻血出た。【サキ】
:もうホモでいい()
完全に忘れてたお知らせ投稿を責められないように誤魔化したけど、上手くやれたぜ。あとサキさんの鼻血出たは本当か冗談かわからんぞ。……後で通話しとくか。
「そうそう、SNSってやっぱり始めたほうがいいですかね?」
:やってくれると助かる。
:お、遂に?
:フォローしました。
:はぇぇよ。
:お知らせとかもあるだろうし、やったほうがいいと思いますよ!
:ぜひやってください!
やはり始めたほうがいいのか。サキさんにDM送る為とはいえアプリダウンロードしちゃったし、このまま腐らせるのも勿体ないよね。お知らせとかあると嬉しいみたいだし、今後必要になるよなぁ。おっさんからはもう許可出てるからやってみようかな。
「んー……わかりました。それじゃ、配信終わったらアカウント作りたいと思いますー」
:キターーー!!
:マ?待機しとくわ。
:これで日常的にも雹くんと絡めるのか。
:DMの返答相手は考えたほうがいいですよ!【サキ】
:ついでに質問箱も始めようぜ。
:一度にいろいろやろうとすると失敗しない?
:とりあえずSNSから始めましょ。待ってますぜ。
「質問箱ですか。まぁそれも追々やっていきしょうか。それじゃ、今日もやっていきましょー。待ちに待ったあのホラゲーですよー」
:忘 れ て た
:あっ(白目)
:ごめん用事思い出した。【サキ】
:逃亡は死刑である。
:あ、おいまてぃ。
:今回のってガチで怖いやつ?
:ガチもガチよ。流石に雹さんも叫びそう。
:雹くんの叫び声と聞いて。
:なんか湧いてきたぞ。
「……それじゃ、今日の配信は終わりますね。皆さんお疲れさまでした」
配信を終えてスマホをポチポチ弄る。アカウント作成の方法は知ってるからサクサクっと作って……よし、無事できた。サキさんへのDMで作ったアカウントはサブ垢としてとりあえず置いておこう。何かあればこっち使うって感じで。うんうん、私もだいぶそれっぽくなってきたのでは?ふふふ、悪くないですなぁ。
「お?おぉー……次々とフォロワーが増えていく」
概要欄にはチャンネルのURLと一応本人ですと書いておいた。すぐにフォロワーが増えてく増えてく。やべー、昔やってたゲームのフレンド数余裕で超えちゃったよ。……お、もう50人突破。早い早い。え、100人?君達どっから湧いてきたの?配信した時なんか80人しかいなかったのに。
あと20人どうした。まぁ嬉しいからいいか。しかしまぁ……数字見るだけでもニヤニヤしちゃうなぁ。やばい、このままじゃずっと見てそう。とりあえず風呂入ろう風呂。
「ふぃー……聞いてくれよ隊長ぉ~」
ぷかぷかと水の上を浮かぶアヒル隊長に話しかける。もちろん独り言。歳を取るとこうやって独り言が増えていくわけですよ。悲しいかな。気にしてないけど。でもおっさんになったなと言われたらちょっと凹みそう。多分気にしないけど。あぁぁぁぁぁ……気持ちぃぃぃぃ。
【…フムフム、なるほど。面白いVtuberっスねぇ。……よし!次はこの人に決めたっス!】
二時間も湯船に浸かってた。ふやけそう。でも気持ちがいいので仕方ない。とりあえずスマホぽちーっと。おろ?通知が溜まってる?……おぉ、フォローしてくれた人達からのメッセージだ。1時間前のもあるなぁ。今から返信しても大丈夫かな?とりあえず、問題なさそうなのには返しとこーっと。DMにも一通届いてるね。なになに……うん?
これは……Vtuber?
【初めましてこんばんはッス!情報系Vtuberのはやて丸っス!急ですけど、睡眠ボイスで今話題の雹夜さんに配信でインタビューしたいっス!お返事お待ちしてるッスよー!】
「……インタビュー?」
おまけ
⚠感想にて(ハーメ○ンの感想にて)
「怖い本音読してボイスにしたらどうなるのかサキさんで実験しようぜ」
みたいな感じのお願いされたので書いてみました。短めですがよければ。
雹夜&サキばーじょん (雹夜が音読、サキが聞き手)
「そして、少年は小屋の中に入っていきました。暗闇の中を手探りで、少しずつ、少しずつ進んでいきます」
【……】
「ふと、前に出した右足が何かを踏みました。少年は恐る恐る、足元を見ます」
【……】
「しかし足元には何もありませんでした。少年はホッとして緊張が抜けたのか、その場で少しだけしゃがみました」
「……直後、背後から誰かが抱きついてきました。そして言います」
「見つけた」
【……】
「……ふぅ。どうでした?……サキさん?」
【……ぐす】
「え」
【……うぅ……グス……】
「ちょ、ガチ泣きやめてください!わかった!わかったから!後で好きなセリフ言ってあげるから泣き止んで!……売らないほうがいいかなぁ」
結果 ダメでした。
雹夜&おっさんばーじょん
(ホラゲープレイ おっさんプレイ 雹夜リモート視聴)
「ふむ……つまりこの病院には他にも幽霊がいるみたいじゃの」
「だねぇ。あ、そこのアイテム取るんじゃない?」
「ほいほい。……お、新しい幽霊出てきたの」
「明らかな出現ポイントだったし驚かんなぁ。おっさんも霊感あるんだっけ?」
「あるというか、何体かは撃退したぞ。お、向かってくるのか。逃げるか」
「へぇー……あれ、あの幽霊女の子じゃん。しかも小さい」
「どれ見てみるか」
「白いワンピースだね。可愛い」
「パンツ見えねぇかな……顔はイマイチじゃのぅ」
「どう?見れそう?」
「もう少し……見えた!って作り込み甘すぎだろこのゲーム!!」
「いやまぁ、そういうゲームじゃないしなぁ……とりあえず一回コンティニューしとくか?」
「仕方ないのぅ」
結果 楽しみ方が別方向に行く。
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