第5話 人気Vtuber?それどころじゃねぇ!!!
コメントがものすっごい流れている。
なんかやばい。なんだこれ?何が起きてるんだ?何かやらかした?ゲーム?写っちゃいけないもの写った?サキって何?誰?そんな人物出てきた?やばい、見逃したかもしれない。え、もしかして見逃したのってもう見れない?マジ?どうしよう……
(……うん?なんか違うなコレ。コメント欄にサキって人が現れたのか?なるほど?よくわからん)
どうやらゲーム内での話ではないらしい。よかった。よかったけど、じゃあこのサキさん?という人は誰なのだろうか?……いやまぁ、なんとなくね?なんとなーく察したよ?もしかして有名な人なのかな?と。いやしかしだよ諸君。そんなアニメみたいなラッキーが起きるだろうか?否、んなこと起きるわきゃない。でもコメント欄には居るんだよなぁ。めちゃくちゃ皆騒いでるけど、ぜんっぜんわからん。反応したほうがいいよね?でもどう反応すればいいんだろうか?騒ぐ?びっくりする?うーん、正直わからない人に対して無理やりテンション上げるのも失礼な気がする。
だからといって無視は絶対駄目。私でもわかる。これは炎上になる。あーくそ、今までどうにかなるだろう精神でやってきたけど、やっぱりVtuberについて一回調べるべきだった。……とりあえず反応しよう。反省はあとでするとして今私がやるべきことは相手に失礼にならない程度に反応をする。まずはコメントを見てから反応の仕方を考えよう。
:雹さん!この機会に媚び売りましょ!
:媚びは駄目だぞ。サキさんそういうの嫌いだし。
:とりあえず媚びと下ネタは駄目です!
:雹さんの普段の態度なら大丈夫。
:コラボ!コラボお願いしましょう!!
:お、落ち着け。とりあえず普段通りいきましょう。
:サキさんが居ると聞いて。初見。
:サキさん居るってマジ?
:初見。イラスト可愛い。
:オブリビオォンとか懐かしいな。初見。
:サキさんこんな無名のVtuber見てるのか。とりあえず登録。
:声がめっちゃ低いの草。
:でも良い声だな。
:サキさんと聞いて。
:サキさんと聞いて。
下ネタは駄目。媚びも駄目。まぁ当たり前だけど、これらは気をつけておこう。そしてすっごい視聴者増えてきた。コメントもやばい。流れすぎてやばい。これをサキさんというVtuberさんは普段から見てるのか。すごいなぁ。いやー、やっぱり私には無理だなこの人数と空気。なんか疲れそう。まぁこれで人気出るわけでもないし大丈夫でしょ。とりあえず2つに気をつけながら反応を……あっ!!!
その時だった。
思えば、これが全ての原因だった。いやまぁ、どう考えてもこれしかないんだけど。
大量のコメント。
大量の視聴者。
人気Vtuber。
私には無縁と思われたそれらが一斉にやってきて、私はその対応に追われていた。
そして忘れていたのだ。メニュー画面を開かずに対応しながらゲームを進めていた事を。
……そして、その時はやってきた。
「……ああああああああああああ!!!!僕の!!僕のルシエン兄貴がああああああああああ!!!」
画面には無残な姿のルシエン兄貴が。クエストは暗殺ギルドの大事な部分まで進んでいき、物語が大きく変化する場面が始まっていた。今まで手助けをしてくれていたあのルシエン兄貴が死んでいる。私を暗殺ギルドに誘ってくれて、褒めてくれて、プレゼントまでくれたルシエン兄貴が、あの、兄貴が……
:雹さんがめっちゃ叫んでる。
:びっくりした……
:そういえばその場面だった。
:驚くのがそっちかい!
:あぁ、ルシエン兄貴が……
:ゲームもやばいこと起きてるしコメント欄もやばい事起きてる。
:雹くん!とりあえずゲーム止めよう!!
:先にサキさんに反応してあげて!皆見てるよ!!
皆がコメントで必死にフォローしてくれている。今更だが、私はゲームやアニメ、ドラマなどのキャラに感情移入はほとんどしない。「このキャラ結構好きだなぁ」というキャラが死んだとしても泣いたりびっくりすることもない。「あぁ、そんなものか」程度だ。しかし、本当に気に入ったキャラには物凄く感情移入してしまう。そしてルシエン兄貴。奇跡的にも感情移入できるほどのキャラになっていたが、タイミングが悪かった。ほんとうに、ただタイミングだけが悪かったのだ。
「それどころじゃねぇ!!!ルシエン兄貴が!!許さねぇ……許さねぇぞ!!」
反応を待ち望んだ視聴者達に返ってきたのは、とてもショタのイラストから出てくるようなものではない、ドスの利いた怒声だった。
後日、Vtuberを初めて一ヶ月。まさかの炎上事態に。これで燃えるのか?と思ったけど、どうやら見ていたサキさんの視聴者さんの中に過激勢の方が居たらしく「俺達のサキさんを無視した」という内容が広まり炎上した模様。マジ?
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