破壊衝動
綿麻きぬ
大事なモノ
僕は大事なモノを見つけた。初めて大事だと思えるモノを見つけた。それは繊細で少しの衝撃で粉々になってしまう。乱暴者の僕にはとても扱いきれないモノだということはすぐに分かった。
そしてそれは手を伸ばしたら届く距離にあって、壊すと分かっていて僕は手を伸ばす。するとそれは僕の手の中に飛び込んできたではないか。
あぁ、これは運命だ。そう勘違いしてもおかしくはないだろ?
そう勘違いした僕は初めのうちは大事、大事に扱っていた。だけどいつからか自分の中にあってはならない感情があることに気づいてしまった。
その感情は大事だと思うほど、強くなっていく。大事という感情とは相反するものであった。
壊したい。元の形が分からないほどに壊したい。
破壊衝動は日に日に強くなっていき、抑えるのがつらくなっていく。壊したら後悔するのも分かっているのに。
そんなある日、僕はそれをついに壊した。自ら手で。あれだけ大事にしていたのに。
壊してしまった。壊してしまった。あれだけ大事なのに。大事なはずなのに。僕自身も傷つくのに。壊してしまった。
後悔は止まらない。けれども、僕は興奮していた。この状態に。
大事にしていたモノが僕自身の手で崩れ去る。この快感に僕は呑まれてしまった。
あぁ、頭が狂ってるのは分かる。だが、もう僕はこの快感から逃れられない。
破壊衝動 綿麻きぬ @wataasa_kinu
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