第4話 「本と友達」

ことはちゃんと出会ってから4日ほど経ったある日。


その日の昼休み、私は学校の図書室に1人居た。


私たちの学校の図書室は三階にあり、廊下も人通りが少なく読書に没頭するには程よくもっぱら図書室を利用する人は限られており室内にいる人数も2、3人と極めて少ないものである。


この人が少なく静かな室内が落ち着くということもあり、私は時々こうして図書室で読書するのだった。


本に目を向けていると 扉が開く音がし、そちらに目を向けるとそこには隣のクラスのたちばなさんが居た。橘さんも読書が好きらしくこうしてたまに図書室で会うことがある。とはいってもそこまで仲がいいということはなく、クラスが隣で下の名前が小雪こゆきということぐらいしか知らない。

そんな彼女と目が合うと会釈し、彼女もそれに応え本を手に目の前の椅子に腰をかけた。


黒く艶のある髪を長く伸ばし、髪や服の間から見える肌は白く透き通っている。図書室で座って本を開き始める姿は少し輝いて見えた。


少し見惚れていると彼女の方から私に声をかけてくる。


「西園寺さん、お久しぶり。」


「久しぶりでもないでしょ。1週間ぶりくらい」


彼女はここで私と会うと必ず「お久しぶり。」と挨拶をする。同級生相手に「こんにちは。」というのは変な感じがするらしい。正直私からしたら「お久しぶり。」も変なような気もする。


「今日は何の本を読むの?」


「今日はミステリーかな…。この間は恋愛だし。西園寺さんは…?」


いつも通りの会話を小声で続ける2人。そこまで仲良くないがそもそも私と仲良くする人は他に余りいない。私の基準で言うならば彼女は趣味が合うと言うことを含め、十分仲がいいに含まれるのかもしれない。


「橘さん、私と仲良くするの嫌じゃない?」


しまった。思わず考えていたことが口に出てしまった。


橘さんは少し驚いたような表情をするも、あまり気にした様子はなかった。


「別に…平野君が西園寺さんは悪い人じゃないって言ってるし、意外と話し合うし…。まぁ、平野くんは誰にでも優しいけどね。」


「そっか…平野君そんな事言ってくれてるんだ。」


再び本に目を向ける彼女の肌白の頬は少し赤くなってるように見えた。


その後少しの間お互いに読書に集中していると昼休み終了5分前を告げるチャイムが鳴った。


「あ。もう時間…授業行くから…またね。」


「うん。頑張って。」


「西園寺さんもね。」


互いに図書室で別れそれぞれ次の授業の教室へと向かう。


授業中、窓に目を向けるとあの大きな公園が少し離れた所に見えた。


ことはちゃんはまだあそこに居るんだろうか。


あの日、彼女に出会ってからまだ1度もあの公園には行っていない。


今日行ってみようか。


「また遊ぶって約束したもんね…。」


1人呟きながら黒板に目を戻し授業に集中する事にした。





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