第3話 「おともだち」
私たちはことはちゃんの家に行った後、再び元の公園へと戻ってきた。
結果から言うと家にことはちゃんのおかあさんはいて私も会うことは出来た。…けど私たちはあの場所に居続けることは出来なかった。
ことはちゃんのお母さんに会う前、どんな怖そうな人が出てくるのかと思っていた。もしも育児放棄をしているような人だとしたら私が口を出したら恐らくなにか言い返されるに違いないと思っていた。
勿論私はその覚悟があってことはちゃんの家に向かった。
しかし、実際に家のドアが開き迎えてくれた母親は違っていた。
目元はやつれ、明らかに元気がなく疲れているように見えた。その上ことはちゃんについて話そうとした所「あの子は…あの子は…」と言い、目元に涙を浮かべ始め、泣き崩れてしまったのだった。
ことはちゃんはそんなお母さんを何も言わず私の背に隠れ見つめていた。そんな状況にいたたまれなくなりこの公園に戻ってきたのだった。
「おねえちゃん!そういえばお名前、なんていうの?」
「私?そっか…まだ言ってなかったね。私の名前は
ことはちゃんが乗ったブランコを揺らしながら話す。あの後一緒にこの公園へと戻って来たのだが彼女に「さびしいから遊んでほしい。」と言われ、何だか過去の自分と重ねてしまい断ることは出来なかった。
「よぞら…きれいな名前だね!!」
「ふふっ…ありがとう。ことはちゃんも可愛い名前だと思うよ?」
お互いに笑い合いながらブランコを揺らして遊ぶ。
この空間は心地の良い空間でもあった。私自身元々兄妹はいなかったため妹ができたようで嬉しくもあったのだ。
「ことはちゃんは学校は…?」
「…行ってないの。みんな話しかけてもむしされちゃうし…あんまりお友達もいないんだ…。」
「…そっかぁ…おねえちゃんもお友達少ないの。
…良かったら私とお友達になってくれる…?」
「え?!いいの?!ありがとう。よぞらおねえちゃん!」
私の言葉に万遍の笑みを浮かべ返してくる。余程嬉しいようだ。
「あ…長くて呼びにくいと思うからおねえちゃんのままでいいよ?」
「じゃあ…おねえちゃんってよぶね!!
ふふっ…やったぁ…お友達だ。いつか100人友達出来るかなぁ。」
「あ。それあの歌だね。一年生になったら~ってやつ。」
「うん!私もみんなとお山でおにぎり食べられたらいいなぁ…。」
「ふふっ…い つ かできたらいいね。」
そんなことを話していると時間はあっという間に過ぎてしまった。公園の時計に目を向けると既に0時を越えようとしていた。
今のところお巡りさんは来ていないがそのうち深夜の見回りで来てしまうだろう。その時には補導は免れないだろう。傍から見ると私は公園で1人で遊ぶ学生なのだから。
「ごめんね…ことはちゃん。そろそろおねえちゃん帰らなきゃいけないから…。」
「…そっか。また遊んでくれる?」
「うん。また来るね。」
ことはちゃんの頭に軽くて手を触れ、その場を離れる。
霊というものは大体この世に未練があるのか、それか本人が気づいていない。というものが多い。
彼女はまだ気づいていないのか、それとも何か未練があるのか。あるとしたらその未練は何なのか。
そんなことを考えながら私は帰路を急ぐのだった。
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