第2話 「出会い」


「えーっと…あとは味噌を入れて…。」


夜、私は夜ご飯の支度をしていた。


実家で母が居た時にはいつもご飯は用意してあった。用意してあったというのはいつもテーブルの上にラップに包まれて置いてあった。


私は家ではいつも一人ぼっちだった。


お父さんは海外に仕事に出ていたし、母はいつも夕飯の支度をすると「忙しい…」といいながら外に出ていった。そんな生活が嫌で私は高校入学を機に家を出てきた。両親も特に反論はしなかった。


今では自分で食事を用意することぐらいしか変わりはなく別に寂しいとかはない。生活費なども月ごとに入れてくれるので苦しいということもない状況である。


「あ…味噌切れちゃった…買ってこなきゃ…」


そんなことを考えながら料理をしていると食材を切らしてしまったことに気づいた。今は20時、近くのスーパーは21時までなので急げば間に合う。


「…こんな時、お母さんはどうしたんだろ…」


ふとそんなことを思ってしまったがスーパーの閉店時間が迫っていることを思い出し、鍋の火を止めてスーパーへと向かった。


「牛乳と…油と…そうだ。味噌はあっちだよね…」


スーパーの中は1時間もしない内に閉店になるということもあり主婦はいつもよりも少なく仕事終わりのサラリーマンや割引の惣菜パンを狙う大学生などがチラホラと歩いていた。


私はその中を家を出る時にメモに軽く書いてきた「ついでに買うものリスト」を見ながらスーパーの中を歩き回る。


「買い忘れはないよね…」


スーパーからの帰り道、リストを見ながら夜の街を歩く。スーパーには間に合ったがお金を払い入口を出たのは閉店ギリギリになってしまった。ここら辺は街中で1番大きな公園があり街灯も明るいので他よりは危険は少ない。


…そんな時だった。


…キィー…キィー…


背筋が凍る体験とはこういう事だろう。

当然今は21時過ぎ、こんな時間に遊ぶ人など誰もいないであろう公園からブランコの動く音が聞こえ思わずそちらに目を向けてしまう。


そこには10歳くらいだろうか?小学生くらいの小さな女の子がブランコに乗っていたのだった。


「…君…どうしたの…?お名前は…?」


少し怖かったがこんな時間に少女が一人で遊んでいるのは何かあると感じ、声をかけてしまう。

…家に帰りたくない理由でもあるのだろうか。


「わたし…?私は大森おおもり ことは!

ここで遊んでるだけだよー?」


「遊んでるって…お母さんは?」


「お家には居るよ…でも私がただいまって言って帰ってもむしされちゃうの。だからさびしいからここで遊んでるんだ…。」


「そっか…でもことはちゃん小さいし風邪引いちゃうよ。お家に行こう?お姉ちゃんが一緒に行ってあげるよ。」


「…うん…!わかった!じゃあお家まであん内してあげるからついてきて…。」


勢いでことはちゃんの家へと向かうことになってしまったがことはちゃんのことを考えると放っておけないと思う。


ことはちゃんの家に向かう途中、道が丁度同じ方向だったのでスーパーで買った物は自分の家の冷蔵庫に入れてきた。


その間ことはちゃんには入口のドアで待っててもらったが入れた方が良かったのだろうか…?


そんなことを考えながらことはちゃんの家へと向かったのだった。



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