第5話 お祭り当日

「本日は、お集まりいただきありがとうございます!」


 よく晴れたホライ村に、マーロウの声が響く。

 アルドたちが各地で宣伝をした成果もあってか、たくさんの人が集まっている。

 がっつり旅装に身を包んだ人から、ホライの近くの村の住人だろうか、普段着のものまで様々だ。


「ここに、第一回ホライ村祭りの開催を宣言いたします! 皆さん、是非ホライ村を楽しんでいってください!」

 マーロウが祭りの開催を宣言し、参加者がそれぞれ興味のある場所に移動を始めた。


「オレたちも、祭りを楽しもう!」

 アルドの言葉を合図に、仲間たちも村中にちらばっていった。



 村には祭り用の飾り付けがなされ、屋台が軒を連ねていた。

 屋台はホライの住人ではなく、近隣の村の商店が主となっているようだった。

また、少数ではあるが、リンデや王都から観光ついでに商売をしに来た屋台もあるらしく、素朴な店から珍品を取り扱う店まで様々だ。

 その中でも、いっとう不思議なものを扱う店――恐ろしいくらいに陽気なぬいぐるみや、怪しげな本、何とも言えない輝きを宿す玉が並んだ店先では、ユーインが豪奢な短剣を挟んで、店主と話し込んでいた。



 鍛冶屋では、村でとれた鉱石で作った武器や、この日のために用意したと思われる小さな金属製の土産物が売られていた。

 メイは、鍛冶師としての血が騒ぐのか、熱心に商品を見ては鍛冶屋に質問を重ねていた。隣ではエイミが同じように商品に見入っている。



 かまど屋では、スタンプラリーの客の相手に忙しいレベッカに代わって、ノマルが鉱石の解説をしていた。

 はじめはノマル自身もスタンプラリー目的でかまど屋に来たはずだが、居合わせた客に鉱石の説明をするうちに、抜けるタイミングがわからなくなったのか、そのまま何組もの客に説明していた。



 また、「マクマクの森」ではベネディトが、祭りそっちのけで斧を振るっていた。木よりも、マクマクやズマカズラ、アルシを切り倒している数のほうが多そうだが……



 ヘンリーが歌を披露する近くには、たくさんの観客がいた。

リハーサルの時よりも多めに用意された簡易の椅子はいっぱいで、立ち見の客が外周を囲っている。立ち見の観客に交じってジルバーがいた。時折、妻への手紙にしたためるためか、メモを取っている。


 村長の家の近くでは、モナともちょろけ、村外からやってきた子どもと猫が、一緒になって走り回っていた。

 嬉しそうな歓声を上げる子どもたちを、スタンプラリーの台紙を持ったダルニスをはじめとした大人が見守っていた。ダルニスが持つ台紙に気が付いたもちょろけが、器用に枝でスタンプを押し、周囲の台紙を持った人々にも、同様に押印していく。



 スタンプラリーを回っていたフィーネに、大工のゴードンが絡み、どこからかやってきたアルドに止められる。

 何を言ったのか、アルドはぐっと苦虫をかみつぶしたような顔で抗議をしていた。


 第二の炭鉱では、参加者が間違って炭鉱に入り込んでしまわないように、テリーが気を配っていた。

 だが、いたずら盛りの子どもたちには「大人の隙をついて、禁止されている場所に入り込む」というスリルが絶好の遊びになるのか、茂みに隠れて機をうかがっている。

 そんないたずらっ子たちに目ざとく気が付いたリィカは、こっそりと近寄ってから、くるりとツインテールを回す。驚いた子どもたちは、村の中心部に走り去っていった。


 橋の対岸では、サイラス、ヒルダ、グレースと、外から来た人々が談笑していた。何か驚くような話題が出たのか、サイラスが「クワッ」と口を開いて腰を引く。

 それを見て、話題がさらに盛り上がる。笑い声は山肌を駆け上がって空に抜けていった。


めいめいに祭りを楽しんでいると、時間はあっという間に過ぎていった。



◇◇◇



「皆さん、本日はありがとうございました」

 大きなトラブルもなく、大盛況のうちに祭りが終わり、屋台や祭りの片付けも粗方済んだころ、アルドたちは村長の家にいた。


「次回の祭りは、村の住人だけで実施できそうです」

「次回?」

 お礼を言った後に、晴れやかな顔で続けるマーロウに、アルドはオウム返しに問うた。


「ええ、こういうことは、一回やって終わりではなく、次につなげていかないと!」

 マーロウは、やる気に満ちた目で力強く宣言する。


「モナさんの希望もありますし、ゆくゆくは「マクマクの森」を会場にした催しも開いてみたいですね」

「他にも…… やりたいことが、いっぱいあります。この村の歴史は、まだ始まったばかり。色々なことに挑戦したいですね!」



  ⇒クエストクリア!

 (⇒Next新たな住人を迎えよう!)

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