第3話 木こりの娘_モナ

 アルドたちは、モナとマクマクを探してホライ村の隣に広がる「マクマクの森」に駆け込んだ。

 常ならば、青々とした木々からこぼれる日差しの美しい、静寂な森である。


「モナとマクマクは、どこにいるんだろう」

「そういえば、この森にはモナ殿のご母堂が眠っているのでは……?」

 駆け込んできたものの、いざ「マクマクの森」に入ってみると、森の広さにどこから探してよいかを迷うアルドに、サイラスが答えた。

 その時、森の奥から「キャー」と高い声が響いた。


「この声は…… モナか!」

「奥のほうからだわ!」

 アルドたちは、悲鳴の聞こえた方向に向かって駆けだした。



◇◇◇



 時は戻り、アルドたちが、「マクマクの森」にたどり着く少し前、モナともちょろけはシルビアの墓前にいた。

 シルビア――モナのおかーさんのお墓は、「マクマクの森」の中でも、いっとう木漏れ日がきらめいて、鳥たちの歌がやさしく聞こえる場所にある。また、おかーさんの好きだった水色の花が一面に広がっている。

 そこでモナは、花の描かれたスタンプをもって、アルドたちを待っていた。


「だあれも、こないねー」

 が、そろそろ待つことにも飽きてきていた。

 モナがこの場所に着いたのは、お昼ご飯を食べてから少ししたころだったが、今はもうおやつの時間もとっくに過ぎている。


 お墓に花を供えてみたり、もちょろけと遊んだりしていたが、それにも飽きて、モナは少し前から膝を抱えて座り込んでいた。

 「くぅ~」と鳴った、自分のおなかの音を合図に、モナは立ち上がった。


「もう、おとーさんも、かえってきたかもしれないし、モナもかえろー」

「マク、マクマクー」

 村に向かって元気に進みだしたモナを、もちょろけは慌てて追いかけた。



◇◇◇



 アルドたちが、悲鳴の聞こえた場所に駆け付けると、黒い毛むくじゃらのケモノと、紫色の食虫植物――アルシとズマカズラに襲われそうになっている、モナとマクマクがいた。

 おびえるモナの前で、マクマクが枝を振ったり、回ったりと、アルシとズマカズラに対して威嚇をしているが、あまり効果は出ていないようだ。


「モナ殿、マクマク殿!」

サイラスが、アルシとズマカズラの間を縫って走り、モナたちと魔物を分断する位置に滑り込む。

「こっちは任せて!リィカ、サポートはお願い!」

「任されマシタ!」

 エイミが毛むくじゃらのアルシの腹に、3連の打撃を叩き込み、すかさずリィカが魔法で追撃する。

「これで終わりだ!」

 アルドが紫色のズマカズラに斬撃を放った。



「モナ、マクマク、大丈夫か?」

 戦闘終了後、アルドがモナたちに声をかけた。


「マク、マ、マク……」

「お兄ちゃんたちが、たすけてくれたから、だいじょうぶー」

 モナは、うっすらと涙のたまる眼で答えると、自分の足元にいるもちょろけに抱き着いた。

「もちょろけも、ありがとうー」


「マクマク殿 モナ殿を守って偉かったでござるよ」

「マクー」

 モナに抱き着かれ、とまっどた雰囲気を出していたもちょろけであったが、サイラスに褒められ、嬉しそうに枝を振った。


「モナは、どうして森に来たのかしら?」

 涙目のモナが落ち着き、もちょろけから離れるのを待ったエイミが、モナに視線を合わせるようにしゃがんでから、質問する。


「おとーさんが『おまつりはたのしい』っていってたから、モナ、おかーさんにもおまつり、みせてあげたかったのー」

「……そうか」

 しゅんとした顔でうつむいたモナに、アルドも思わず悲壮な顔になる……


「シカシ、モナさんとマクマクさんダケデ森に入るノハ、キケン! デスノデ!」

「そうね。せめて大人と一緒でないと……」

「う~ん。森を会場にできるかは、村に帰ってからマーロウに聞いてみよう。」


 しょげたモナを励ましながら、アルドたちは夕日の差しこむ「マクマクの森」を後にした。


  ⇒Next「炭鉱の村 ホライ」でマーロウに報告しよう!

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