第3話 大工_ゴードン、吟遊詩人_ヘンリー
「酒場にヨク居る男性ヲ、発見デス!」
「おう、久しぶりだな、お前ら」
アルドたちが第1の炭鉱前につくと、ゴードンが立っていた。
「ゴードン殿、ここにハンコはあるでござるか?」
「あるぜー」
ゴードンは右手に持ったスタンプを振って答えた。
サイラスからスタンプラリーの台紙を受け取り、「お、ここで2つめか」とつぶやき、押印してくれる。
「ほら、お前らもその紙をよこしな」
「ああ、頼むよ。それにしても、ゴードンがこういうことに参加してるのって……」
「意外か? まぁ、この村の未来なんざ知ったことじゃねぇが、外から祭り目当てで来る奴らの中には、いい女がいるかもしれねぇからな」
「はは、そうか。……ゴードンらしいな」
アルドは、ゴードンの言葉に呆れて笑いながら、スタンプラリーの台紙を受け取った。
「よし、次は橋に行ってみようか」
「あら、向こうから歌声が聞こえるわ」
アルドたちがゴードンと別れ、橋に向かって歩いていると、村の奥から竪琴の澄んだ音に合わせて、朗々とした歌声が響いてきた。
「あちらは、橋のとは逆方向でござるが…… 楽しそうでござるな!」
「マーロウも村を回ってほしいって言っていたしね」
ワクワクとしたサイラスに先導され、アルドたちは橋の反対――吟遊詩人の家を目指した。
「やぁ アルド君たち久しぶり」
アルドたちが吟遊詩人の家の前に着くと、ヘンリーは竪琴を演奏する手を止めてほほ笑んだ。ヘンリーの周りには、観客用だろう簡単な椅子がいくつか並べられている。
「久しぶり。ヘンリーは祭りで歌を披露するのか?」
「そうなんだ。ボクは吟遊詩人だからね。祭りでは、この村の再建の歴史を謳いたいと思っているよ」
「さっき聞こえてきた唄かしら?」
エイミの疑問にヘンリーはひとつうなづくと、竪琴に手を添えた。
「良かったら、一曲聴いていってくれないか?」
ヘンリーは、アルドたちが椅子に座るのを待ってから歌いだした。
「険しい山々に囲まれた廃村に、ある日ひとりの青年が帰って来た。かつての村の繁栄を知る青年は、誰も何もなくなり、草に覆われた故郷で、旅人に出会った……」
午後の光が緩やかに明度を落とし、あたたかな風の温度が少し下がるまで、アルドたちはヘンリーの語る物語に聴き入った。
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