第30話
城から戻りセンの家に二人が戻ると、シシリーはセンを詰問した。
「セン、君は本当に魔族ではないのか?」
その質問に、センは驚かなかった。
「いつかはバレると思ってたよ。思ってよりも、遅かったな」
センは、微笑んでいた。
その微笑に、シシリーは苛立つ。それが、いつものセンと変わらなく見えたからである。こんないつもと変わらない顔で、センは自分をだましていたのだ。
「魔族……なのか」
シシリーの言葉に、センは頷いた。
「半分はあたりだよ」
その言葉に、シシリーは剣を抜こうとした。
だが、抜けなかった。
脳裏に今までの思い出がよみがえり、シシリーに剣を抜かせなかったからである。何とか抜いても、シシリーからは力が抜けていた。剣は床に突き刺さる。
「どうして嘘を付いたんだ?」
シシリーの言葉に、センはため息をついた。
「深い意味はなかったんだ。だって、君はあのままだったらちゃんと休まなかったから」
そうだった、とシシリーは思い出す。
自分とセンが出会ったときには、シシリーは病に倒れていた。それこそ、センであればシシリーを簡単に殺せていた。
「なぜ、俺を助けた。俺がタリオン殺しだとは知っていただろう」
「知っていたよ」
センは、断言する。
「それでも、倒れている人間を見捨てては置けない。俺が人間として生きようとしている限りは」
センの言葉に、シシリーは首をかしげる。
「人間として生きる……どうしてだ」
センは告白する。
「俺は、タリオンの息子だ。それと厳密にいうならば、俺は嘘を言っていない。俺は人間と魔物の混血だ」
その言葉に、シシリーは驚く。
混血の子がいるとは聞いたことがあったが、実際に見るのは初めてだった。
「俺は誰も助けない。誰も救わないという。誰も傷つけない。という決心をして、魔術を学んだんだ」
どうして、とシシリーは尋ねる。
「魔族と人間の争いが憎しみから生まれていたからだ。俺は、その憎しみを全部断ち切る。なにもしないことで、俺のところで全部を終わりにする。俺は、どちらでもないから」
シシリーには、センの決意がよくわからなかった。
ただ、彼がよく考えて誰にも関わらないで生きることを決めたことは分かった。
そして、もう一つ分かったことがある。
「センはすごい」
誰のためにもならない、自分のためにもならないかもしれない技術を学んだ。
それでも、彼の存在は人のためになっている。
色々な人を助けている。
「センは、すごい!」
シシリーは、再度そう言った。
それは力強い響きを含んでいた。
魔王を倒した俺ですが、隣にはもっとすごい人がいます 落花生 @rakkasei
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