第27話

町にワイバーンが現れたという話を聞きつけ、シシリーとセンはそちらに向かった。最近では二人は魔獣が現れると退治し、その亡骸をギルドに売っていた。ワイバーンは特にたか姉が付くために、進んで狩りたい獲物である。しかし、ワイバーンは強い魔獣であるので出現してしまうと町の被害が広がってしまう魔獣でもあった。


「セン!」


「ウォタークロ―!!」


 センの呪文で、シロは水の爪を得る。その爪で、シロはワイバーンの動きを止めた。その動きを止めたワイバーンにとどめを刺したのはシシリーであった。シシリーは剣の血脂を払いながら次のワイバーンに狙いを定める。


「ファイヤーボール!」


 飛ぶワイバーンに、シシリーはファイヤーボールで狙いを定める。炎で撃ち落とされたワイバーンをシシリーは次々と狩っていった。


「うわぁ!」


 センの悲鳴が聞こえた。見ればセンが、ワイバーンに掴まれて連れ去られそうになっていた。シシリーは剣をワイバーンに向かって投擲する。ワイバーンごと落ちた地面に落ちたセンは、なんとか立ち上がりながらも再び魔術を使用する。


「ありがとう、シシリー。おかげで助かった」


 センはさらに魔術を使用して、ワイバーンを打ち落とす。


 二人はワイバーンをすべて倒すと、二人はワイバーンの親指を切り落とした。巨大なワイバーンを持ってギルドへいくことは難しいために、親指だけを切断して持っていくことにしたのである。


 ギルドの受付嬢は、それを見て驚いた。


「本当にワイバーンを狩ってきたんですね……すごいです」


 唖然とする受付嬢だったが、ワイバーンの爪だけでは換金できないことを受付嬢は伝えた。二人はがっかりした。骨折り損だったからである。


「それでも爪だけを買い取ることはできるので、買い取りますね」


 受付嬢はそう言って、ワイバーンの爪の数だけの金額を渡した。


「それにしても、本当にすごい」


 受付嬢がシシリーを憧れの目で見るので、シシリーはセンも一緒に戦ったことを告げようとした。するとそこに破落戸たちがあらわれた。破落戸たちはセンが、ワイバーンの爪の分の料金を受け取ると知るとセンに突っかかってくる。


「羽振りがいいね。その分でおごってくれよ」


 あまりにしつこいので、センはむっとする。


 センと破落戸の間に入ったのは、シシリーであった。

 

シシリーは、破落戸たちを一発でのす。


「げっ、おまえは……!」


 破落戸はシシリーの顔を覚えていたらしく、一目散に逃げだした。「覚えていろよ!」と逃げ台詞を吐きながら逃げていく破落戸にセンは苦笑いをする。


「ここらで、シシリーに喧嘩を売る人間がいなくなるのも時間の問題だな」


 センの言葉に、シシリーは「そうだと良いけどね」と言った。


 ギルドの受付嬢は何が起こったの分からないらしく、ぽかんとしていた。


「もしや、そこにいるのは噂に名高い魔王殺しのシシリー殿か!」


 シシリーたちの前に現れたのは、大男であった。傷だらけの顔は歴戦の猛者を思い起こさせ、シシリーは思わず背にセンを隠す。


「そうですが」


「いやいや、警戒しないでもらいたい。私はここのギルド長のルイスだ」


 ルイスと名乗った男が、ギルドの受付嬢にお茶を頼んだ。受付嬢にそのようなことを頼めるということは男の身分を信じてもよさそうである。


「ワイバーンを倒したそうだな。うむ、大いに結構」


 ルイスは、受付嬢に渡した成果に関心を示す。


「その腕を見込んで、お願いがある。竜退治を手伝ってもらえないだろうか」


 ルイスの話によると、ここ最近近所に竜が住み着いてしまい困っているとのことであった。竜は比較的穏やかな種だが、卵を産むために巣を作ると凶暴化する嫌いがある。そのため巣作り前にどこかに追っ払うのが、決まりである。だが、それでも巣を作られてしまったら、卵を産まれる前に追い出すしかない。


「卵を産んでいるのか?」


 センは、目を輝かせて尋ねる。


 竜の卵は珍しい。


 そのため、かなり高値で取引されている。


「ああ、おそらく生んでいると思われるが」


 センは、シシリーの袖をちょいちょいと引っ張る。


「俺、竜の卵ってみるのは初めてなんだよ」


「見たいの?」


 シシリーが尋ねると、センは頷いた。その目は輝いていて、実に楽しそうだった。竜に対する恐怖はない。シシリーの実力を信じている目であった。


「じゃあ、討伐に参加しようかな」


 シシリーはそういう。


「俺も参加するからな」


 センもそう言った。

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