第24話
シシリーたちは、センの村に帰ってきた。
しばらくは穏やかに暮らし、シシリーはセンが作った薬を売りに行く日々だった。村の人々は、シシリーが薬を売りに行くたびにありがたがった。シシリーとしてはその薬はセンが作ったものだと言いたかったら言ったら売り上げが落ちるので黙るしかなかった。センは村との接点が減ったせいもあり、穏やかに生活をしていた。
ただ誰も訪ねてこない生活で薬だけを煎じているというのも寂しいような気がした。シシリーは、センを村まで連れだせないかと思った。センは優しいし、賢い。人気者になってもおかしくはないというのに。
シシリーは、センを村に連れだそうとした。
「セン、村に行こう。村にいって、色々な人にあおう。分かってくれる人も出てくるって」
だが、センはそれを拒否する。
「俺はいかないからな。別に……今の生活が寂しいってわけじゃないんだから」
センは、シシリーの過去を何一つ知らなかったことを思い出す。
魔法ではなくて魔術の教師についていたことは知っているが、それ以外はまったくしらない。
「センって、ずっとこういう生活だったのか。誰とも会わないで、できる限り一人でいるような生活」
センは、少しばかり黙り込んだ。
「……そうだよ」
センの言葉に、シシリーは寂しい思いに駆られた。
孤独の思い出は、聞いている今も孤独にさせる。
「セン。私は君に人に囲まれていて欲しいんだよ」
シシリーはそう言った。
センは、むっとする。
「俺は、今のままでいいのに」
シシリーの言葉に、センはそう答えた。
「薬草を煎じて、お前が売りに行って、そういう生活でいいのに」
センは、本心からそう思っているようだった。
一方でシシリーはあきらめきれない気持ちだった。センを村に溶け込ませたい。そればかり考えるようになった。
「シシリーさん」
ある日、村で親しくなった娘イデーナに声をかけられた。
「やぁ、薬はいるかい」
シシリーは、そう言ってイデーナに薬を売る。薬を受け取ってもイデーナの顔色はさえなかった。
「顔色が悪いが、どうかしたのか?」
シシリーは尋ねる。
「ちょっと考えていてね。それで頭が痛くなってるの。村の学校で子供たちに改めて危険な薬草なんかを教えたいんだけど、なかなか講師が見つからなくって」
シシリーは、それならばいい人間がいると答えた。
「センならば植物に詳しい」
「でも、あの人は魔術使いでしょう。ちょっと怖いわ」
イデーナの言葉に、シシリーは怖くないんてないと反論した。
「センは言葉使いが乱暴だけど、いい子だよ。俺の手当てもしてくれたんだ」
その言葉にイデーナが驚いた。
「あの魔術使いがあなたを助けたの。というか、あなたは人の助けを必要とするの」
イデーナの言葉に、シシリーは笑う。
「私だって人の助けを必要とするときはありますよ。人間ですもの」
どうやらシシリーは村人に超人と思われているようであった。
だが、シシリーは風邪を引いたところをセンに助けてもらった男である。人の助けも必要だ。
「センの人柄は私が保障します。センに学校の先生をやらせてあげてください」
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