第20話


 勇者は様々な魔族を倒し、魔王に向かってきた。


 そして、とうとう勇者はタリオンを倒したのであった。


 センからキングスライムの首飾りを受け取ると、シシリーは女神に導かれるままに異世界にいくことになった。


女神は、シシリーを泉のなかにいざなう。


シシリーは、センが見つめる中で湖に入っていった。


冷たい水に全身が包まれて、目をつぶる。


「もう、目を開けていいわよ」


 女神の言葉が聞こえて、シシリーは眼を開ける。


するとそこは暗い世界の泉だった。太陽が昇っていないわけではなくて、空全体が分厚い雲に覆われている。それが太陽を遮って暗い雰囲気を醸し出していた。


「これが異世界」


 人っ子一人歩いていない。


 この世の終わりの風景があるのならば、きっとこのような風景だろうとシシリーは思った。こんな風景をシシリーは見たことがあった。


 かつて倒した魔王が根城にしていた、城。


 そこの周囲も、ここと同じように魔力で分厚い雲が覆っていた。食物は育たず、陰険な雰囲気が漂う場所となり果てていた。かつて、シシリーはその雰囲気を自分の心象風景のようだと感じた。


 シシリーは、タリオンを倒すために旅をしていた。


 彼は無名の旅人であり、最初の頃はシシリーがタリオンを倒せるなどとは誰も思ってはいなかった。だが、シシリーの名が有名になればなるにほどに、彼と冒険をしたがる人間が増えた。最初は、シシリーは強力な仲間が増えたことに喜んだ。


だが、そのほとんどのものがシシリーのとどろく名前を利用しようというものだった。それに対して、シシリーは嫌気がさしたのだ。だから、シシリーは一人で旅をしていた。


人を信じない心で、たった一人でいる旅は心を暗くしていった。


だが、今は違う。


キングスライムの首飾りをみて、シシリーはセンのことを思った。


「あの城にいる魔王を倒してほしいのよ」


 女神は、城を指さす。


 シシリーは、頷いた。


「どこから入るか分かりずらいな」


 シシリーは、センからもらった首飾りを握りしめる。爆発の魔術をかけたと言っていた首飾り。その首飾りが城に穴をあけてくれるかもしれない、とシシリーは考えた。


 シシリーは首飾りを投げてみた。その首飾りは大爆発を起こして、城を吹き飛ばした。


 唖然とする、シシリー。


 唖然とする、女神。


「さすがは別の世界で魔王を倒しただけあるわね……」


 女神の言葉にも、シシリーはすぐには答えられなかった。


「これも……センが作った奴なんだけどな」

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