第14話
誰にも効かない魔術を学ぶことになった子供は、今までと同じように賢く魔術を学んだ。だが、その魔術は誰も傷つけることができない武器だった。なんて無駄なことをしているのだろう、とタリオンは思った。
魔法を学べばいいのに、と思った。
魔法は人間たちが使う技術であったが、同胞にもかけることができるものだった。
魔法であれば、子供であっても誰かを傷つけることができた。
●
センの家に帰ってからしばらくして、行商がやってきた。行商とは町から町へと商品を売り歩く人々のことをいい、センの家に立ち寄ると彼はそこで買い物をしたり逆に薬を売ったりしていた。どうやら、馴染みらしくセンとも仲良く話し込んでいる。
シシリーがそんな様子を眺めていると、困ったような顔でセンがこちらに助けを求めてきた。
「シシリー、ちょっと相談がある」
センの相談というのは、行商たちの護衛についてだった。最近は物騒なので腕のたつ護衛が欲しいというのが、行商の話であった。センとしては行商についていってもいいが薬しか作ってこなかったセンは護衛としての信頼がなく、腕が経つと立証できる人間にもついてきてほしいとのことだった。とどのつまり、シシリーとセンで行商の護衛をやらないかという仕事の誘いである。
シシリーは、二つ返事で了承した。
特に断る理由もなかった。
タリオンを討伐したというシシリーの登場に、行商の人間たちは恐縮していたがセンの友人だと紹介すると打ち解けてくれた。よい人たちのようだ。
行商の人々は、これから貴族の館へと向かうらしい。そこれ仕入れた珍しい薬屋や布を売るのだという。貴族とは合ったことがあったが、館には言ったことのないシシリーもどのようなどころだろうかと心を躍らせた。
「どうして、城には言ったことがあって屋敷には行ったことがないんだ?」
「城には、他の兵士との訓練との仕事があったからな。逆に屋敷には仕事がなかった」
もしも、シシリーが他の屋敷に派遣されることがあればいっただろうが、そのような機会がなかった。シシリーがそんな話をするとセンは「ふーん」と分かったような分からないような答えを返した。田舎暮らしのセンにはいまいち実感がわかない話だったらしい。
行商の一行は、シシリーやセンがいたこともあり野盗の心配はせずに過ごすことができた。野盗と遭遇することもあったが、そのような輩は巨大化したシロに恐れをなして逃げていった。ここでも仕事をしたのはシロだというのに、シシリーが「さすが」とほめたたえられてしまった。
「まぁ、お前の巨大な刀でもビビってたから、いいんじゃないのか」
センは、そういうがシシリーは解せない。
センだって、すごいと認められるべきなのだ。
そうやって、認められればセンも田舎でくすぶっているような人材にはならないだろうに。そこまで考えて、シシリーはセンに都会にでて活躍してほしいのかと考える。
いいや、違う。
センには、センの場所で正しく人々に認められて欲しいだけなのだ。
シシリーの手柄だけになるのではなく、て。
そんなことを考えながら、シシリーとセンは行商の荷車にゆられる。ゆっくりと揺られるとどうも睡魔に襲われるらしく、センは船を漕いでいた。その様子が奇妙に可愛らしくて、シシリーは笑ってしまった。さすがに、貴族の館につく前に起こしたが。
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