第16話 王道とはこの事なのだ。

「聖女の魔力は万能です。」


この作品を知っているだろうか。


2020年に放送されたアニメである。


あらすじを言えば。


アラサーOLの小鳥遊 聖(たかなし せい)は

残業を終え帰宅した所で異世界から「聖女召喚」されてしまう。

その世界は魔物が跋扈ばっこしており人類はその脅威に

おびえながら暮らしていた。 


聖女はその状況を打破する切り札として異世界から召喚される存在だ。

聖女は傷ついた者を癒し、魔物の発生源たる瘴気を浄化する。

その力を持って異世界に平穏をもたらす。


その役割を期待されて小鳥遊 聖は召喚されたのだ。


しかし、今回の召喚はイレギュラーだった。

本来なら召喚されるのは1人なのだが、もう1人召喚されていた。

日本の女子高生である。


本来なら召喚の儀式は国王の裁可が必要なのだが

今回の召喚は皇太子カイルが独断で行った。

そしてカイルは女子高生を「聖女」と決めつけ、厚遇すると共に

聖については放置することとした。


何でも彼は建国神話にある

「王子は聖女と結ばれ国を豊かに平穏に治めましたとさ」

と言うおとぎ話に憧れていて、それを実現するために召喚を

行ったらしい。


聖女かどうかは「人物鑑定」を行わなければ判らない。

しかし、それができる人物は召喚儀式の際に昏倒しており

昏睡状態であった。


にもかかわらず、カイルは女子高生を「聖女」として

聖を「聖女にくっついてきたオマケ」扱いして放置したのだ。


聖は王国の文官から

「元の世界へは帰ることが出来ない。」と聞いて絶望するが

「異世界に来たのだから楽しまなければ損!」と気持ちを切り替えて

行動を開始した。


日本にいた時の趣味であるハーブの知識を生かして

薬草研究所へ入所。

そこで、理解ある上司や気のいい同僚に出会い

充実した日々を送るようになる。


そのうちに聖の作るポーションが

通常の1.5倍の効力があることが判明したり

聖魔法であるヒールを使える事が判ったり。


そう。小鳥遊 聖、彼女こそが「聖女」だったのだ。


聖はこの世界で暮らしていくうちに能力を開花させ

王国でも最重要人物になっていく………。




と言うのがあらすじである。


このアニメに私が注目したのは

この作品の主人公が「聖女」だった事による。


異世界転生モノでよくあるのが

日本では至極フツーの主人公が転生によりチートキャラに転換。

その世界に君臨する強敵を粉砕するカタルシスを体験するものだ。


だが、聖女?


主人公が聖女の物語とは珍しいな。

ちょっと見てみようか?


こうして視聴を開始したのだが。



面白かった!



1人の女性の日常を丁寧に描き出しているのは好感が持てるし

徐々に才能を開花させていくところなどは

実にワクワクさせてくれた。


彼女が強大な敵と派手に戦う訳ではない。

戦闘シーンなど12話中に数回しか無い。

しかも彼女は戦う騎士達の回復役として同行しているだけで

戦ったりはしないのだ。

(魔物の発生源たる瘴気を浄化するシーンはある)


実にゆったりとした作品世界。

それが心地よい。


もちろん、ストーリーとして起伏があるのは当然だが

それも日々暮らす上であり得る、起こり得るレベルの物でしかない。

「聖女」と言う立ち位置に由来する社会的立場の変化による

ビッグイベントもあるのだが、それはスパイスと言うべき物だろう。



さて、私はタイトルに何と記したか?


「王道」である。


私はこの作品が、あるジャンルの王道を行っていると感じている。


それは「少女漫画」なのだ。


ストーリー構成として


・ないがしろにされるヒロイン

・理解ある仲間・友人との出会い

・その中で成長していくヒロイン

・ふとした出会いから始まるロマンス

・徐々に大きくなっていく恋愛感情

・ヒロインの恋愛感情の自覚

・相思相愛を確認したうえでの恋人関係の構築


どうだろうか?

正しく少女漫画的ではないか!


しかもアニメの中で描かれる聖の表情や仕草が

いちいち可愛く愛おしい。


アラサーらしくひねている部分もあるけれど

14・5歳の少女のような初心な反応を見せてくれる彼女が

とても素敵なのだ。


チート全開でド派手なバトルが満載のアニメに

疲れているなら、ぜひ一度見て欲しい。


ゆったり、のんびりとした作品世界は

荒んだ貴方の心を癒してくれる事、間違いなしである。




余談だが彼女の名字、小鳥遊たかなしについて。


なぜ小鳥が遊ぶと書いて「たかなし」なのか?

たかなし→鷹無し→天敵たる鷹がいない。

だから小鳥が遊んでいられる。

ゆえに小鳥遊たかなしなのである。




今回はここまで。











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