第 10 話 久しぶりの駅そば。

随分と間隔が開いてしまった上に

予告とはまるで違う内容になってしまう事に

まずは謝罪申し上げる。


ここ半年以上に渡って我が身に起きている

様々な事象が絡み合い

モチベーションが最底辺まで降下。


年明けのフォロワー増加によって持ち直したものの

やはり日々のあれやこれやに翻弄されて

なかなか執筆できない日々が続いていたのだけれど

吹っ切って書くことと相成ったので

これからよろしくお願い申し上げる次第。



皆さんは駅そばと聞いてどんな物をイメージするだろう?


駅の改札口付近にある店舗、あるいは駅ホーム内にある

立ち食いスタンドだろうか。


私は断然、駅ホームの立ち食いスタンドなのである。


私は名古屋近郊に住んでいる。

となれば、私の駅そばは名古屋駅ホームの立ち食いスタンド!

これが、うまいんだよな~。

カツオが効いた出汁に醬油がいい塩梅でたまらんのですよw


私と駅そばの付き合いは、もう50年ほどになる。

小学生の頃から自宅沿線の名鉄に乗ってあちこちウロウロ。

当然、ターミナル駅の 新名古屋駅 も

数え切れないほど利用している。


一日中電車に乗って、満足した後。

家に帰る電車に乗る前に駅そばを食べていく。

これが私の楽しみの一つだったのだ。


当時、私は10歳くらいだった。

大人たちが駅そばを食べている姿が

とてもカッコ良く見えたんだよね。


店の屋号は忘れてしまったけど

そこのきしめんは本当に美味かった!

当時はきしめん一杯 130円だったかな?

月見にしても 150円!

かき揚げ入りで 220円だったと思う。

50年前の話だから今とは物価が違うとは言え非常に安くて

「乗り鉄」の私にはとてもありがたかった。

なにせそれを食べる以外のお金は運賃に使っていたし。w


中学生になると「ブルートレイン・ブーム」がやって来た。

国鉄(現在のJR)が走らせていた寝台特急にスポットが当たり

それが走る沿線の少年たちは競って写真に撮っていたものだった。


私の住んでいた名古屋地域は東海道本線が走っていて

九州から東京へ向かうブルートレインはすべて通ると言う

恵まれた場所だったのだが…。


いかんせん、通過する時間が問題だった。


午前3時から7時にかけてと言う中学生にとっては

苛酷な時間帯であったのだよ。


1人で行くなんて危険すぎると言う訳で

同好の士、数名が午前1時に集合して

自電車で東海道本線の沿線へ向かい撮影する。

当然、平日は無理で土曜の深夜から日曜の朝にかけて

撮影するのだ。


当時はデジタル一眼レフなんて無い。

みんなフィルムカメラ。

どうやって綺麗に撮るか頭を悩ませたのはいい思い出だな。


列車は時速100㎞くらいで走行している。

それを静止した状態で写真にするにはシャッタースピードを

短くしなくてはならない。

でも、そうするとフィルムに充分な光が当たらなくて「真っ黒け」。

つまり、列車の姿が全く見えない写真になってしまう。

そこで。

光を補うために フラッシュ を使う事になるのだが。


いま考えると。

私たちは非常に危険な事をしていたと背筋が寒くなる。


運転士の立場から見てみると。

ヘッドライトで前を照らしながら走行しているけれど

運転室内は暗い状態だ。

そこへフラッシュがたかれたらどうなるか?


強い光の残像で前方確認がしにくくなる。

数秒ほどかも知れないが前が見えなくなる。


その時。

前方の踏切内に何かがあったとしたら…。


当時、私たちは中学生だった。

自分たちの行動がどんな事を引き起こすのかを

想像する事もせずに

無邪気にシャッターを切っていた。


年を重ねた今だから分る事とは言え

当時の運転士に土下座したいくらいの気持ちである。


ずいぶん話がそれたが駅そばへ話を戻そう。


深夜の撮影は危険もあったし、

そうそう頻繫にできるものでもない。

そこで私は駅での撮影に切り替えた。


具体的には名古屋駅ホームでの撮影である。


当時私の住んでいた町から名古屋駅までは

電車で30分ほど掛かった。

始発が5時55分だ。


到着が6時20分。

私が利用する名鉄・新名古屋駅から国鉄名古屋駅まで

歩いて5分ほど。

入場券を買ってホームへ駆け込む訳だ。


※入場券:

列車に乗ることはできないがホームへ立ち入る事が出来る切符。

以前は列車で出かける人をホームで見送る事はよくあった。

そんな時に使われる切符である。

以前は時間無制限だったが現在は購入時間から2時間まで有効と

なっている。


となると。

撮影できるのは

西鹿児島→東京 の「はやぶさ」 と

長崎→東京 の「さくら」 しかない。


それでも私は月に2回ほどは撮影に出かけていた。

なにより鉄道が好きだし、始発に乗って出かけるのは

なんだか特別な感じがしてワクワクが止まらない事もあったかな。


「さくら」が名古屋駅を出発するのは7時5分。

撮影は30分程度で終了してしまう。

まぁ、他の列車も撮影するからもう少し時間がかかるけど。


さて、始発で名古屋駅に来たと言う事は

家で何も食べて来なかったということだね。w

当然、そんな早朝に母親に作ってもらう訳にいかないしさ。


そこで私が向かうのがホームの東側にある

立ち食いスタンドなのである。


名古屋駅は東海道本線・中央線(名古屋ー塩尻)・関西線・東海道新幹線が

集まる

大規模ターミナル駅だ。

新幹線を除いてもホームは8面。新幹線は2面で10のホームがある。

そしてそのすべてに立ち食いスタンドが設置されているのだよ。


冬場など夜も明けない時間に家を出て名古屋駅に向かう。

そして吹きさらしのホームでの撮影。

当然、体は冷え切ってくる。

それを癒してくれるのが立ち食いスタンドなのだ。


ちゃんと風よけの囲いもあるし

何より暖房もそれなりに効いている。


出汁の香りが鼻をくすぐり、何とも言えずホッと息をつくことが出来る。

そして、券売機で買った食券をカウンターに出し

提供されるまでの時間にこれからの撮影プランを考える。

それは至福のひと時…と言うのは大げさか。w


最近、私は自家用車で行動することが多くなった。

初めて車を所有して40年ほど経つているため

最近はよほどの事情が無い限り鉄道は利用しないのだ。


しかし、先日。

久しぶりに鉄道を利用して名古屋駅に出かけることとなった。


ならば!

駅そばを食べていかなくてはならない!

(なんだ?この使命感w)

友人に会う時間をわざわざ昼ごろにセッティングしたのも

駅そばを食べるためだったりする。w


実に10年以上振りに訪れた立ち食いスタンド。

たたずまいも変わらないそこは

なんとなく「お帰り。」と言ってくれているようだった。


ん?


囲いに貼ってあるキャプションが目に入った。


「当店の天ぷらは揚げたてを提供しています」


え?

駅そばの天ぷらって作り置きでしょ?

衣が大きくて冷たい海老天とかよくあるよね?

揚げたて?どういうこと?


はてなマークを纏いながら券売機で卵入りエビ天ぷらそばを購入。


コロナのせいでカウンターは間仕切りされていたけど…

カウンターに券を置いて提供を待つことに。


すると店員のおば様が左奥の方へ行く。


お?

あれはフライヤーか!


つまり…ここで揚げちゃうって事なんだ!


へぇー。

全国に駅そばは数あれど注文が入ってから揚げるなんてのは

(ホーム内の立ち食いスタンドでは)

なかなかないんじゃないかな。


前に来たのが10年以上前だから

その当時どうだったか覚えてないけど。


おぉ。

出て来ましたよ。


揚げたての海老天が二本載った月見そば!


軽ーく唐辛子を振ってツユを一口。


うん!この味だよ!

変わらない味がたまらない!


海老天をかじると熱々で頬がゆるんじゃうよねぇ。

尻尾まで食べても大丈夫だ!


麺自体は他の駅そばと変わらないと思う。

だけど、この天ぷらがあるだけで

絶対に食べる価値があると思うな。


ちなみに。

名古屋駅ホームの立ち食いスタンドで

揚げたてを出しているのは

「住よし」という屋号のスタンドです。

在来線ホームの「住よし」はすべて揚げたてを出しているそうなので

時間に余裕があるなら立ち寄ってみてはいかが?

(天ぷらを揚げる時間がかかるから急いでる時はお勧めしません。)


すっかり堪能してツユも飲み干してしまった。


少年の日のように身体も温まっていい気分で

「ごちそうさま。」と声をかけて

ホームへ戻り友人との待ち合わせ場所に移動する。


ただ。


ただね…。


大人になっての楽しみ。

酒類が販売停止になってたんだよぅーーーーーーーー!


美味いそばと天ぷらをつまみに昼酒を楽しもうと思ってたのに…。


くそう。コロナ許すまじ!



今日はここまで。







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