第7話 進め3
そこに、のんびりとした声が加わった。
「感動の再会だねえ。おめでとう。まったくウツギくんってば、ずーっといじいじしているから、そろそろ飽きてきたところだったんだ。よかったよかった。あ、お帰り、トウカちゃん」
「ああ――、シラバミさん、いたんですか」
鳥居の陰に隠れるようにして立っていたシラバミが顔をのぞかせた。なぜかその腕にはアサヒとカグノが拘束されていて、それぞれの口を手でふさがれている。
「何やってるんですか」
「感動の再開を邪魔する無粋な子供たちのお世話」
シラバミはくすくす笑う。はい、と手を離すとアサヒとカグノは大きく息を吸った。
「トウカ! 大丈夫だったか!」
「ヨシノー! 寂しかったの!」
「うわっ」
アサヒはトウカに突進し、カグノはヨシノに抱きついた。ほらみろとシラバミが肩を
「だ、大丈夫だよアサヒ。ごめんね、心配かけたみたいで」
「いや、無事ならいいんだ。突然いなくなるからびっくりした。カグノがさ、ヨシノがあやかしの世からいなくなったんだって騒いでいて。それで、トウカやポチもいないから、多分トウカたちは人の世に行ったんだろうってことにはなっていたんだけど」
アサヒはちらりとウツギを見た。
「ウツギは、トウカは帰ってこなくていいんだって言っていたけど、俺はトウカはこっちに戻ってくるだろうなって思ってた。だから枷のまじない、完成させておいたよ」
「アサヒ一人で?」
「めちゃくちゃ頑張ったんだからな。あとはトウカがまじないに力を注ぐだけだ」
「すごい。ありがとう、アサヒ」
アサヒは恥ずかしそうに笑った。
「まあ、もともとトウカと一緒に大枠は作っていたから、俺がしたことなんて大したもんじゃないよ。でも、これで準備は整った。トウカの方はどう? できそう?」
トウカはウツギを見た。ウツギもトウカを見て、頷きあう。
「うん。大丈夫。そのために、私は帰ってきたんだから」
すぐにでもいけるよ、というと「その前にヨシノとカグノに頑張ってもらわなきゃな」とアサヒは笑った。
(第7話「進め」 了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます