第2話 望むものは3

「トウカ!」


 自分を呼び止める声も耳に入らず、自室に駆け込む。目当てのものを掴むと、また転びそうになりながら三人のもとへと駆けた。冷たい、手のひらの感覚。


「これ!」


 驚くウツギたちに、手の中のものを突き出す。武骨なそれは――、このあやかしの世で親しくなった、友の首にあったもの。


「ヒサゴが――、鎖に繋がれていたあやかしがつけていた枷だよ。彼女も呪いを受けたあやかしだった。魂だけの曖昧な存在になってしまう呪いを。でも、まじないの鎖で魂を繋いでいた。この枷には、そのまじないがすこしだけ移っているの」


 花のあやかしだった美しい少女のヒサゴ。今ではもう彼女も鎖も消えてしまったが、わずかにまじないが移ったこの枷は、トウカのもとに遺されたのだ。

 アサヒは枷に触れると、真剣に気配を探った。


「――ほんとだ。かすかにまじないがかかってる。でも、このままじゃ弱い。これだとまだ使えないよ。トウカ、このまじない道具を完成させられるのか?」

「きっと、大丈夫」


 枷にかかっているまじないは、トウカの知識にはないものだった。正直に言えば、使いこなせるかどうかは分からない。それでも、これが道を開くための鍵だという確信があったし、そのためならなんでもする覚悟だってあった。

 アサヒはトウカの瞳をじっと見て、頷く。


「俺は、まだ一からまじないを作るだけの力はない。でも、まじないの気配が残っている道具なら、それを手がかりにまじないを練り上げることはできる。――この道具が使えるようにするの、俺も手伝うよ」


 そう言って、微笑んだ。


「俺、トウカには借りもあるからさ。手伝わせてよ。結局この前はなにもできなかったし」

「アサヒ、ありがとう」


 トウカは再び泣きたくなった。自分を助けてくれる存在がこんなにも頼もしいものだなんて知らなかった。

 だが、そんなトウカとアサヒを眺めながら、シラバミは意地悪く目を細める。


「でもさ、トウカちゃん、盛り上がっているところ悪いのだけど、まじないの道具は二つ必要なんじゃないかい? トウカちゃんとタンゲツちゃんの二人分。仮にそのまじない道具が使えたとしても、一つしかないのであれば無意味だよ」

「それも、きっと大丈夫」

「どうして?」


 トウカにはその問題を解決する心当たりがあった。きっと、彼女たちは自分の呼びかけに応えてくれる。息を吸った。

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